「こんなものは長く続かないと思っていた。どこかで破綻すると思っていた」麻生太郎財務相・金融相はビットコインについてそう語った。ただでさえ理解しづらい仮想通貨はこの発言によりさらに「いかがわしいもの」「危険なもの」という印象を植え付けられた。ビットコインの取引所「マウントゴックス」を運営するMTGOXが2月に破綻してから4か月が経ち、あれほどメディアを騒がせたビットコインだが今ではすっかり存在感は薄れたかのように見える。果たしてビットコインは死んだのか。
日本国内におけるビットコインの現状はどうか。今月19日に自民党はビットコインに関し業界団体をつくって自主規制すべきだとの提言をまとめた。仮想通貨の取引を容認した格好だ。仮想通貨への各国の対応はまちまちだ。ドイツやノルウェー、カナダは取引を容認する一方、ロシアや中国は「違法」と扱い、取引を禁止した。米英は態度を明確に統一せず黙認する状態だ。麻生財務相・金融相の発言とは裏腹にその存在感は確実に増している。
日本では普及に悲観論が広がるのと対照的に米国などでは関連ベンチャーが次々と登場し、勢いを増している。ネット通販、ゲームなどソフトの購入、飲食店の支払い、貿易金融など投機以外の用途が広がっている。アマゾン・ドット・コム、ウォルマート、百貨店メーシーズなどはビットコインを受け付けており、米の多くのネット通販で間接的にビットコインが使える。
そして、ビットコインの普及を大きく後押ししているのが、新興国のニーズだ。新興国では手数料の安さから出稼ぎ労働者からの国際送金での利用ニーズが膨らんでいる。先進国では決済・送金手段としてのビットコインの影響は限られる。一方、IT(情報技術)インフラが普及し始めたばかりの新興国では基本的な金融サービスですら利用者は限られている。安価な新サービスへの需要は大きい。「ビットコインは今後数年で、新興国で本格的に普及する」、「技術が洗練されてくればビットコインは不安定な新興国の弱い通貨より好まれる可能性がある」との指摘もある。
ビットコインは利用が始まったばかりの新しい技術だ。日本のメディアも、これをどう評価するかについて態度を決めかねている。概して言えば、ネガティブなスタンスだ。実は、存在意義を問われているのは、既存の通貨制度であり、金融制度であり、社会制度そのものなのかも知れない。だからこそ、麻生財務相・金融相は既存の社会制度に対する挑戦を切って捨てたのかも知れない。(編集担当:久保田雄城)