スクウェア・エニックス〈9684〉(以下スクエニ)が、キャラクターの著作権問題をめぐり、ゲームメーカーSNKプレイモアから刑事告訴された。問題となったのは漫画作品『ハイスコアガール』。今回の問題で全品回収、電子書籍の配信停止、そして連載休止が発表された。
『ハイスコアガール』は格闘ゲーム全盛期の1990年代を舞台に、ゲーム好きの少年と少女が不器用に心を通わせていくストーリーだ。実在のゲームが数多く作中に登場し、当時流行した必殺技やキャラクターなどの描写が盛り沢山で、昔ゲーム少年だったアラサーを中心にヒット。現在5巻まで出版され、アニメ化も決定していた。
しかし皮肉にも、読者の心を掴んだ「実在のゲームキャラの描写」が今回の騒動につながった。作中には、訴訟を起こしたSNKプレイモアのキャラクターも、『KOF(キングオブファイターズ)』などから数多く登場。この著作権許諾を得ていなかったことが問題となった。
以前にも漫画作品内での他版権キャラクターの著作権が問題になったことはあるが、全品回収、電子書籍配信停止、連載休止という今回の措置は極めて異例だ。これだけでも、スクエニとSNKプレイモアの間で相当話がこじれたのではないかと推察される。
SNKプレイモアによると、作中キャラクター使用について、以前から再三に渡りスクエニに注意勧告や販売停止の申し入れを行っていたようだ。しかし、「度重なる勧告に対し、何ら誠意ある対応がなされなかった」ことを理由に今回の刑事告訴に踏み切ったという。
実は90年代に格闘ゲームを作っていたSNKは一度倒産し、SNKプレイモアは実質的にはその旧SNKの版権を管理し、アプリ化やパチスロ化を行っているゲーム会社だ。スクエニにとっては、元々の作り手でなく版権管理者を相手取る訳で、この点も問題の長期化・泥沼化につながる恐れが懸念される。
問題はそれだけではない。『ハイスコアガール』作中には他にも、『ストリートファイターⅡ』で有名なカプコン〈9697〉など他ゲームメーカーのキャラクターも登場するが、こちらには著作権問題は存在せず、むしろコラボなども行われている。邪推ではあるが、スクエニ側の対応が、格闘ゲーム最大手であるカプコンに比べ、SNKプレイモアなど他会社に対しては杜撰だったのかもしれない。逆に、著作権に関し厳しい(もしくは法外な)条件をSNKプレイモアが提示し、問題が長期化した可能性も考えられる。いずれにしても、どこに問題があったか明らかになるにはまだ時間がかかりそうだ。
アニメ化や9月に最新単行本発売も控えていただけに、ネット上を中心にファンからは、連載休止を嘆く声や、早期の再開を望む声が後を絶たない。当時のゲーム文化や90年代の空気を正しく描写した作品という意味でも注目が高まっていただけに、早期の問題解決と連載再開が望まれる。(編集担当:久保田雄城)