2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第1原発事故以来、日本は深刻なエネルギー問題の岐路に立たされ続けている。あの震災、そして事故から3年以上が経った今でも、浮き彫りとなったエネルギー問題に対する解答はまだ出されていない。もちろん、電力などのエネルギー抜きに今の我々の生活を保ち続けることは難しい。だからといって、あの震災、あの事故のことを忘れて、3・11以前のように生活を続けることもまたできない。そうした「答えを出せない状況」が、原子力発電所の稼働を停止させ続け、このまま廃炉とするのか再稼働させるかの結論を遅らせ続けているのだろう。
そうした原子力発電所の再稼働の是非などのエネルギー問題の先送りは、電力の安定的な供給に影響を及ぼす可能性がある。それを回避するために政府は、6月に電力小売りを全面自由化とする電気事業法改正案を成立させ、これにより、2016年から大手電力会社ではない異業種であっても、電力の小売りが行えるようになった。そしてこの電力小売りの全面自由化を受けて、27日、大手通信事業のKDDI<9433>が、マンションを対象とした電力小売りを開始するとの発表を行った。
KDDIは27日、首都圏の1都3県でマンション向けの電力小売り事業を開始すると発表。グループ会社である電力サービス事業者「アイピー・パワーシステムズ」と共同で、9月1日より一括受電サービス「auエナジーサプライ」を立ち上げ、年度内にもサービスを開始させるとしている。
この「auエナジーサプライ」では、KDDIが地域電力会社などから高圧電力を一括購入して、マンションの受変電設備で低圧電力に変換させる。こうすることで、家庭用に対して5%程度、エレベーターなどの共用部分で10~50%程度割引を行う仕組みがとられている。また電気の使用状況をひと目で確認することのできる、スマートメータをマンション全戸に設置するとしている。
KDDIは今後、携帯電話や光回線などの通信サービスとのセット割引も検討する。
KDDI以外にも、パナソニック<6752>やミサワホーム<1722>などの企業が電力小売りへの参入を発表しているが、今回のKDDIの参入発表により、ますます異業種による参入は加速していきそうだ。(編集担当:滝川幸平)