数ヶ月前まで東京市場の主役は外国人投資家だった。ヘッジファンドが行う大口の先物投資取引や最新のテクノロジーを駆使し、1000分の1秒単位で取引する超高速取引(HFT)にマーケットは翻弄されてきた。ところが、今では主役は年金積立金管理運用独立行政法人が運用する年金マネーだ。英語名のガバメント・ペンション・インベストメント・ファンドの頭文字を取ってGPIFと呼ばれる。運用資産は3月末で126兆5771億円。世界最大の年金基金だ。
ゴールドマン・サックス証券は「GPIFは日経平均株価が高いときも日本株を買い増してきており、4月以降も買い増しているだろう」と指摘する。それを裏付けるのが東京証券取引所のデータだ。年金資産を扱う信託銀行による買越額は4~6月で8675億円になった。他の金融機関が売り越しているのと対照的な動きだ。個人投資家も4月以降に大幅な株の売り越しに転じているなかで、年金マネーが株価を支える構図だ。
GPIFの2014年3月期の運用実績は、利息や配当金、売却益を合わせた収益額は10兆2207億円の黒字だった。プラスは3年連続で、黒字額としては自主運用を始めた01年度以降で13年3月期の11兆2222億円に次ぐ2番目の水準だ。GPIFが自主運用を始めた01年度からの収益は計35兆4415億円。安倍晋三政権が発足してからのここ2年でその6割を稼いでいる。株価が下がる局面で買い増しを進めたためだ。一方、株価が上がれば売る側にもなるのが年金だ。
GPIFの投資スタンスは明らかに変化している。金融機関や個人が高値圏と判断し売り越しているにもかかわらず、年金は買い手となり株価を支えている。そればかりか吊り上げているとも見える。まさに年金マネーによる官製相場だ。しかし、買ったからには売らねばならない。今後も株価は上昇し続ける保障はない。GPIFは買いあがった株を売り抜くことが出来るのだろうか。この官製相場の賞味期限はどこまで続くのだろう。賞味期限を見誤った者がババを引くのが株式相場だ。そのツケが我々の老後の年金に跳ね返ってこないことを願うばかりだ。(編集担当:久保田雄城)