■営業利益28.7%、純利益23.9%の大幅増
積水ハウス<1928>は9月4日、2015年1月期の2~7月期中間期(第2四半期)決算を発表した。売上高は7.7%増の9101億円、営業利益は28.7%増の717億円、経常利益は30.5%増の752億円、四半期純利益は23.9%増の421億円。上半期では過去最高の売上高で、5期連続の増収増益となった。
通期業績見通しは売上高1兆8200億円、当期純利益を860億円。売上高は戸建住宅受注の消費税反動減の影響などが、当期純利益は有価証券評価損の計上が影響するとして、それぞれ400億円、30億円下方修正した。それでも収益の改善効果が効いて過去最高の売上、利益には変わりない。好業績を受けて、中間期の配当は前期比で5円増配の25円で、通期の配当も前期比で7円増配の50円で当初予想のまま据え置いていた。
■粗利率が維持、改善できている理由
消費増税前の駆け込み需要で積み上がった前期の受注残が大きく、戸建住宅事業、賃貸住宅事業とも工事は順調に進捗した。建設業界全体では資材価格や人件費の高騰によるコストの圧迫が問題になっているが、積水ハウスの場合は売上総利益を売上高で割った粗利率が前中間期の19.6%から今中間期は20.0%に改善し、戸建住宅事業では0.1ポイント、賃貸住宅事業では0.4ポイントそれぞれ改善している。全体の営業利益率は前中間期の6.6%から7.9%に改善した。工事ボリュームの拡大効果だけでなく、生産効率の改善、継続的なコストダウン努力などがあいまって高い利益率を確保することができている。
■「請負型」の賃貸住宅事業は24.1%の大幅増収
積水ハウスのビジネスモデルは「請負型」「ストック型」「開発型」に大別できるが、今中間期はその3ジャンルとも増収増益だった。
「請負型」の戸建住宅事業の売上高は8.4%減で、受注高は33.3%減。しかしこれは、消費増税前の駆け込み需要が続いた前年2~7月期の好調な受注との比較であるという特殊事情を割り引いて考える必要がある。この分野では商品の高付加価値化が着々と進んでおり、一棟単価は前年同期比で74万円増の3524万円で利益率も改善している。その主役のひとつは、高断熱、省エネ型住宅に太陽電池、燃料電池をダブルで装備した「グリーン・ファースト ゼロ」で、中間期の受注実績は全体の58%に及んでいる。これは国が2020年までに普及を目指す「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」を先取りした商品である。
一方、賃貸住宅事業は受注高は5.8%減だが売上高は24.1%の大幅増となった。2015年1月からの相続税率の見直しを前にした駆け込み需要があるためで、3、4階建ての「ベレオ」、高品質の「シャーメゾン」の販売が好調。高付加価値化、大型化で一棟単価は607万円もの増加の6736万円となった。医療・介護系の建築請負「プラチナ事業」も強化中。中間期でも通期でも「請負型」全体では賃貸住宅の伸びが戸建住宅の落ち込みをカバーする。
請負型の受注高の通期予想は8260億円と前期比で13.2%減だが、駆け込みの影響のなかった前々期の8226億円は上回ると見込んでいる。受注残高は中間期末時点で5353億円だが、今期末は5433億円に積み上がると見込んでいる。全社ベースの受注残高見通しも7931億円で前々期末の6896億円を上回り、それが今期の増収増益、売上高、利益が過去最高を更新する見通しの根拠になっている。
このほか、リフォーム事業が13.7%の増収。通期見通しでも9.6%増の1370億円で業界トップを維持する見込み。この分野は営業利益率が12.4%で前年同期比で1.6ポイントも改善している。不動産フィー事業の管理住戸の入居率は96.2%と高水準を維持。分譲住宅事業は営業利益率は2.6ポイント改善。マンション事業も6.9ポイントも改善するなど利益体質が強化された。
■一時的な特需に左右されない着実な成長戦略
概観すると、消費増税後の需要の反動減に見舞われながらも、受注の確保、適正な利益水準の確保、将来のニーズの先取り、未来型の商品づくりなどで着々と手を打ち、結果も出している。同社は一時的な「特需」の動向に左右されることのない成長戦略が着実に進捗しているようだ。(編集担当:寺尾淳)