オバマ大統領は、「イラクのみでなく、シリアにおいても『イスラム国』に対する行動を起こすことをためらわない」と声明し、イラクにおける空爆の拡大に加え、あらたに「イスラム国」が拠点を持つとされるシリアでの空爆を準備する意向を表明した。
米国のオバマ大統領は10日夜(日本時間11日午前)、ホワイトハウスで実施された同国民向けの演説において、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」掃討作戦に関する戦略を発表した。オバマ大統領は、「イラクのみでなく、シリアにおいても『イスラム国』に対する行動を起こすことをためらわない」と声明し、イラクにおける空爆の拡大に加え、あらたに「イスラム国」が拠点を持つとされるシリアでの空爆を準備する意向を表明した。
シリアでの空爆は、米軍が既にイラクで実施している対「イスラム国」空爆作戦を拡大する形で行われる。さらにオバマ大統領は、議会に対し、シリアの反体制派に対する「訓練と武器供給のための追加権限」を与えるよう要請した。これは、シリアにおいてアサド政権や「イスラム国」と戦うシリア反体制派に対して、イラク軍同様に米軍が直接訓練指導を行い、武器を供与するというものだ。その一方、本作戦に関連して、米軍地上部隊の派遣は行わないことを明言した。
今回のオバマ大統領の決断は、「イスラム国」の脅威が以前より高まっていることを受けてのものだ。同過激派組織は、シリアやイラク両国での混乱下において勢力を伸ばし、イスラム教原理主義者を戦闘員として訓練する一方、複数の経路で武器を入手している事が明らかになった。紛争兵器研究所(Conflict Armament Research)の調査によると、イスラム過激派の兵員が放棄した武器の中に、M16自動小銃を含め「相当量の」米国製の兵器が含まれていたと指摘している。同研究所は、同時に米軍の正規支給品であることを表す「Property of US Govt」(合衆国政府所有)の刻印がある軍需物資の写真を公表した。これらの米軍支給品は、サウジアラビアからシリアの反体制派に供与されたものを「イスラム国」が何らかの方法で入手したと考えられている。
オバマ大統領は、イスラム国に対する攻撃について「米国は有志連合とともに、テロリストの勢力を後退させる。広範かつ持続可能な対テロリズム戦略によって『イスラム国』を弱体化させ、最終的には壊滅する」と述べた。同時に「『イスラム国』のような『がん』を根絶するには相当な時間がかかる」とも発言し、今回発表した作戦が長期戦になるとの見通しを示した。(編集担当:久保田雄城)