経済を失速させる税制改悪か? 赤字企業に厳しく黒字企業優遇

2014年09月28日 21:51

 政府は2015年度の税制改正で、資本金1億円以上の大企業に対し欠損金の繰り越し控除制度を縮小していく方針を打ち出した。赤字(欠損金)を計上した大企業は、翌年度以降の黒字(課税所得)から赤字分を差し引き法人税が決定する。現行では課税所得の8割まで赤字分を差し引くことができる。しかし15年度以降からは上限を5~6割にとどめることが検討されており、制度が変更された場合には赤字を出した大企業ほど税負担が増すこととなる。所得の全額を差し引くことを認めている中小企業は対象外となるが、仮に中小企業までを対象に広げた場合には92万社が増税となり、企業にとっては死活問題となりそうだ。最終的な案は年末に実施される税制改正論議で固まる。

 政府は法人税の実効税率を今後数年かけて現在の約35%から20%台に引き下げて行くことを計画しており、それと引き換えに「課税ベースの拡大」は避けられないとしている。法人税の実効税率を1%引き下げるためには約5,000億円の財源を確保する必要があり、最終的な目標とする20%台までに下げるにあたっては約2兆5,000億円を別枠から補填しなければならない。そのため法人税率を下げるための財源確保として、欠損金の繰り越し控除制度を縮小していくことが取り上げられているのだ。しかし結果的には黒字大企業を優遇し赤字大企業を追いこむ改悪にもなりかねない。 

 さらにもう一つの財源確保策として政府が着目しているのが「外形標準課税」だ。外形標準課税は、資本金が1億円を超える大企業に対し04年度から導入された制度で、赤字に関係なく事業規模に応じて課せられる。試算では外形標準課税の割合を2分の1に拡大することで約7,500億円の税収となり、法人税の実効税率を1.5%引き下げることができるとしている。

 だが外形標準課税は従業員に支払われる賃金などに課税されるため、雇用に悪影響をもたらすことが懸念され、経済を失速させることにもなりかねない。経団連も外形標準課税の拡大には「所得拡大どころか逆行だ」と反発姿勢を示しており、今後の展開に注目が集まっている。(編集担当:久保田雄城)