中小減税より法人減税が優先される不都合な真実

2014年08月10日 19:27

画像・中小減税より法人減税が優先される不都合な真実☆

日本の法人税率は他の主要国と比べて高く、国際競争力を削いでいると言われる。しかし、多くの企業は税金をそれほど払っていないにもかかわらず、「法人税が高い。」と言っているのだ。

 政府は特定の産業・企業を税優遇で支援する政策減税のうち2014年度末に期限が来る措置を原則、廃止・縮小する検討に入った。中小企業の税負担を軽くしている特例措置や、一部の設備投資減税など見直しの対象になる21の政策減税による税収減は約2500億円。これを見直すことで、法人実効税率の引き下げの財源を確保するのが狙いだ。

 法人税の減税の目的は国際競争力の強化だ。低い法人税率で海外の企業を日本に呼び込み、産業の海外流出を防ぐ。日本の法人税率は35・34%と他の主要国と比べて高く、国際競争力を削いでいるといわれる。法人税率の水準は国の立地競争力に大きく影響する。「さらなる法人税率の引き下げが、企業の立地競争力を強化する上で避けられない状況。」これが、政財界が主張する法人税率引き下げの根拠だ。安倍晋三首相は、これを数年以内に20%台に引き下げることを明言し、6月24日に閣議決定された「骨太の方針」にも法人税率を引き下げることが明記されている。

 しかし、実際には、法人税には各種控除や特例など、さまざまな節税制度があり、一部の企業にとっては日本の法人税率は必ずしも高くない。特に大企業は、「欠損・配当不算入・租税特例」の法人税法上の「三種の神器」を駆使して、大規模な節税を実現しているのだ。

 「社長になってから国内で1度も税金を払っていなかった。」トヨタ自動車<7203>の豊田章男社長は5月8日の14年3月期決算発表の場でこう発言した。製薬会社最大手の武田薬品工業<4502>は14年3月期、連結で3416億円、実に売上高の2割に相当する研究開発費を投じ、約240億円の節税(税額控除)を受けているという推計がある。大手総合商社三井物産<8031>は1732億円と巨額の営業赤字を計上、「受取配当金の益金不算入」制度を巧みに利用しているためではないかと見られる。

 このように、節税の仕組みを利用して法人税を減らしている大企業はたくさんありそうだ。これ自体は合法であり、非難されるべきことではない。しかし、多くの企業は税金をそれほど払っていないにもかかわらず、「法人税が高い。」と言っているのだ。そのツケは節税の手段を持たない個人や中小企業が負担することになる。この不都合な真実を白日の下にさらし、税負担の公平性を図る必要があると筆者は考える。(編集担当:久保田雄城)