ローソンは買収発表のニュースリリースの中でも、「成城石井の株式取得が、今期の当社連結業績に与える影響は軽微なもの」としている。550億円という買収費用以上に、今後の大きな利益や展開を見込んでいるようだ。
9月30日、ローソン<2651>は、投資ファンド・丸の内キャピタルから大手スーパー「成城石井」を、負債も含め約550億円で買収すると発表した。買収後も「成城石井」の店名は維持する方針だ。
成城石井は首都圏などを中心に展開する大手高級スーパー。輸入食品やオリジナルの惣菜・デザートなどを中心に、高品質な食料品や調味料を取り揃えている。「安心で、少しだけ贅沢なもの、こだわりのものを」という消費者のニーズを上手く突き、また都市部の好立地中心に展開したこともあり、業績は好調で店舗数も100を越えた。最初期の富裕層に特化した商品展開から、現在では中間層にも手が届くラインナップも増えている。駅構内などへも出店も功を奏し、より顧客を広げている状況だ。
一般的に「超大手」とされるスーパーの売上高目安は1000億円と言われているが、成城石井の売上高は2012年12月期時点で約500億円。この数字だけを見ると、まだまだのようだが、経常利益は業界平均の倍以上である6%台で伸びを見せている。当初は成城石井を上場させる計画もあったようだが、これからの成長性も見越し、丸の内キャピタルは売り時と判断したのだろう。
今年の春頃から売却先を巡り、イオン〈8267〉や三越伊勢丹〈3099〉など様々な会社からラブコールが噂され、実際に三越伊勢丹からは入札もあったが、最終的には売却額の差でローソンに軍配が上がった。
ナチュラルローソンなど、コンビニエンスストアのスーパー化や特色化に実績のあるローソンだけに、成城石井の輸入食品やオリジナル商品を扱うノウハウは、独自の商品開発や展開に大きな成果をもたらしそうだ。逆に成城石井側は、ローソンの全国的な購買データや出店立地データ、物流ノウハウから、さらなる展開が期待できる。戦略によっては、成城石井の都市中心部以外への進出も加速するかもしれない。
ローソン側は、ローソンの出店予定地も、今後周辺の客層を考え成城石井に切り替えていく場合もあると、選択肢の幅を示唆している。互いのシナジー効果に期待が高まる。(編集担当:久保田雄城)