日立×OpenAIが狙う「基幹システム革命」 AIは企業インフラへ進化する

2026年06月17日 12:11

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AIが支える次世代の企業インフラ。日立とOpenAIの連携は、レガシーシステム刷新とサイバーセキュリティ強化を通じ、日本企業の基幹システムが新たなステージへ進む転換点となりそうです。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

日立製作所はOpenAIとの連携を本格化し、AIを活用したレガシーシステムのモダナイゼーションとサイバーセキュリティ強化を推進すると発表しました。金融機関をはじめ幅広い産業への展開を視野に、OpenAIのAIエージェント「Codex」やサイバーセキュリティ向けAIを活用し、企業システムの刷新を支援します。AIは業務効率化ツールから、企業活動を支えるインフラへと役割を広げつつあります。

本文
 株式会社日立製作所はOpenAIとの連携を本格化し、先進的なAI技術を活用したレガシーシステムのモダナイゼーションの加速とサイバーセキュリティ強化を推進すると発表しました。今回の発表は、これまでの生成AI活用に多かった「単なるチャットAIの導入」や個人向けの「業務支援ツール」という枠組みを大きく超えるものです。企業の命綱である基幹系レガシーシステムの刷新と、防御側のサイバーセキュリティへAIを実装することで、日本企業や社会基盤を支えるシステムが新たな段階へ移行する転換点を示す内容となっています。今回の取り組みでは、AI活用が一時的な業務効率化の手段ではなく、経営基盤そのものの改革を担う中核技術として位置付けられている点が特徴です。

 これまで生成AIは文章作成や検索支援といったフロント業務の効率化で普及してきましたが、今回の連携においてその役割は「基幹システムの刷新」へとシフトします。具体的には、日立とOpenAIの双方から選抜されたエンジニア組織である「Forward Deployed Engineers(FDE)」が組となり、OpenAIの高度なAIエージェント「Codex」を活用するアプローチを確立します。

 ミッションクリティカルなレガシーシステムの膨大な既存コードをAIに解析させ、設計情報の可視化から新システムへの安全な移行テストに至るまでの一連のプロセスをAIが伴走支援する「AIモダナイゼーション」の手法を確立していく計画です。日立はこのアプローチを、自社の事業ブランドである「モダナイゼーション powered by Lumada」へと組み込み、基幹システム刷新ソリューションとして提供していきます。まずは高い信頼性が求められる金融機関向けを想定しつつ、順次、幅広い産業分野への展開をめざす方針が示されており、AIが複雑なエンタープライズ領域の刷新プロジェクトにおいて中核的な役割を担い始めていることがうかがえます。

 こうした抜本的な変革が必要とされる背景には、日本企業が共通して直面している深刻な「レガシーシステム問題」があります。多くの企業において、数十年前に構築され、幾度もの継ぎはぎを繰り返しながら長年稼働し続けてきた基幹システムは、熟練エンジニアの引退や当時の設計情報の喪失によって中身がブラックボックス化しています。これが、企業の次世代への投資やシステム刷新を阻む最大のボトルネックとなっているのです。特に日立は、国内だけでも社会のライフラインを支えるミッションクリティカルなシステムを約1万5,000も抱えています。

 それらシステムのモダナイゼーションとセキュリティ向上は、AI時代の持続的な成長に向けた、すべての企業にとって最優先で解決すべき重要な経営課題にほかなりません。これまで仕様書すら残されておらず手がつけられなかったシステムに対し、Codexの解析力と日立が長年培ってきたシステム開発のドメインナレッジを組み合わせることで、コードから仕様を可視化・整理し、新システムへの移行を支援するという、レガシー問題にAIで対応する実践的な手法が具体化しつつあります。

 さらに、今回の連携においてAIが果たす役割は、システムを「作る」ことだけにとどまらず、システムを「守るインフラ」へとも拡大しています。日立は、OpenAIが提供する「Trusted Access for Cyber(TAC)」を通じて、最先端のサイバーセキュリティ向けAIモデルへのアクセスを取得する予定です。これはOpenAIが発表した「日本サイバー・アクションプラン」の一環として、高度なAI能力を信頼できる防御側の関係者に責任ある形で届け、日本の重要分野におけるサイバーレジリエンス(復旧力・防御力)を強化することを直接的な目的としています。日立は、OpenAIの「Daybreak」に基づく防御重視のフレームワークのもと、適切な安全策やガバナンス、人間による厳格な監督を大前提としたうえで、システムの脆弱性の特定、リスクの優先順位付け、さらには修復や検証といった極めて実戦的な防御目的でこのAIを活用していく方針です。

 まず日立のセキュリティ専門組織である「Cyber CoE」が、自社内で実践する「カスタマーゼロ」として日立が提供するシステムの検証を徹底的に進め、そこで得られた知見や運用ノウハウを顧客向けのサイバーセキュリティ強化へ還元していく循環構造を築こうとしています。

 この一連の挑戦を通じて、AIを供給する側と活用する側の双方のビジネスモデルにも進化が見られます。日立は今回の取り組みを機に、モダナイゼーションおよびサイバーセキュリティ領域に強みを持つ実践的なFDE人材のケイパビリティ(組織能力)を飛躍的に高めていきます。そして、そこで得られた知見や成果は、日立のAI社会実装を牽引する専門組織である「Frontier AI Deployment Center」が中央ハブとなって集約され、社会インフラの革新をめざす次世代ソリューション群「HMAX by Hitachi(HMAX)」へと継続的に統合・高度化されていく構想です。

 Lumadaをコアとしたデータ価値創出の基盤が、AIの力によって真の社会インフラ向けプラットフォームへと進化し、世界展開を見据える動きへとつながっています。OpenAI側としても、レガシーモダナイゼーションや防御目的のサイバーセキュリティ領域でのAI活用を「日本企業の事業基盤を強化するうえで不可欠なテーマ」と明確に位置付けており、AIを単なるソフトウェアのレイヤーから、産業基盤に安全かつ実践的に組み込むインフラのレイヤーへと軸足を移しつつあります。

 生成AIはこれまで「業務を効率化するツール」として普及してきましたが、今回の日立とOpenAIの連携は、AIが企業の基幹システムやサイバーセキュリティを支える「経営インフラ」へ進化し始めたことを示す象徴的な事例といえます。こうした流れは、日本企業のDX・AI戦略だけでなく、社会インフラの安全性や運用の在り方そのものにも大きな影響を与えていきそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)