香港デモ、学生と政府が対話開始 しかしまだ隔たりは大きく

2014年10月27日 16:21

画・香港デモ、学生と政府が対話開始 しかしまだ隔たりは大きく

1997年に香港が英国から中国に返還された際、「将来的に普通選挙を導入し行政官を選べるようにする事」が条件に盛り込まれていた。2017年の選挙は、形式上は全有権者による普通選挙となるが、このままでは投票はできても立候補者は中国によって制限される歪なものとなってしまう。

 香港の民主派学生団体を中心に9月28日から行われている大規模デモ行動に関し、学生側と政府側による初の対話が実現した。対話は10月21日香港島南部の専門学校にて行われ、学生側からは大学生連合会の周永康(しゅう えいこう)秘書長らが、政府側からはナンバー2である林鄭月娥(りんてい げつが)政務官らが、それぞれ5名ずつ出席した。学生側は「今すぐに自由を」と書かれた黒いTシャツ姿で出席した。

 しかし、初対話は双方の主張が平行線をたどり、隔たりは埋まらないままの結果となったようだ。今回のデモの経緯や、双方の主張についてまとめ、今後の展開を推測していきたいと思う。

 香港は中国の一部であるものの、一国二制度という高度な自治が認められた特区に当たる。独自の政府が存在し、中国本土からの干渉はあるものの、香港行政官による政治が行われてきた。しかし、今年8月の中国全人代(国会)において、2017年に行われる香港の行政官選挙の候補者は、新設される指名委員会によって制限される決定が下された。つまり、中国政府に認められなければ、選挙に立候補できなくなったのだ。これは事実上民主派の排除であり、自治権の拡大や独立を求めてきた民主派、特にそれを支持する若い世代からは不満が爆発した。これが今回の占拠行動を中心としたデモにつながった。

 学生派が初対話の中で訴えたのは、住民の一定数の署名を得れば中国政府の指名がなくても選挙への立候補が可能になる「住民指名」の導入だ。この仕組みを受け入れれば、デモ隊を解散すると政府側に伝えた。

 これに対し香港政府は、「住民指名は香港の基本法に適用されず、実現はできない」と反論。次回17年の選挙まで、より学生の意見を受け入れ議論する姿勢は示す、という妥協案を提示するに留まった。

 住民指名を導入すると、香港人口の半数を占める月収1800ドル(約19万円)以下の低所得層の意見がそのまま通ってしまう、というのが香港政府の懸念だ。しかしその低所得層の多くはまさに民主化を求める若者たちであり、彼らは結婚や、それに必要な家を買ったり借りたりすることも難しいと将来を嘆いている。民主化デモは、単に自由を求める思想的な部分だけでなく、実際的な生活苦に対する不満も理由になっているのだ。

 政府側は今後も対話の継続を望んでいるが、学生側は、より具体的で実質的な妥協案の提示を求めている状況だ。今のところ中国政府が介入する動きはないが、これ以上長引けば、中国政府側が何らかの「手打ち」を行う可能性もある。しかしそれでは、結局中国の掌に収まり、いずれ別の形で民主化が後退する恐れが大きい。今後の対話の推移をしっかりと見守りたい。(編集担当:久保田雄城)