「地ビール」ブーム再燃 今後の課題は人手不足と原材料価格の高騰

2014年10月31日 15:34

 再燃した「地ビール」ブームは続いている。株式会社東京商工リサーチによると、2014年1~8月の全国主要地ビールメーカーの累計出荷量は、前年同期比7.0%増となったという。この4年間の同期の累計出荷量は毎年前年を上回り続けている。2014年同期の増加率は、前年同期の伸び率(同14.6%増)こそ下回ったが、生産設備の増強やイベントへの出店、さらに小売店の拡販に取り組むなど製販両面での攻勢を推し進め、着実に出荷量を伸ばしたとしている。

 この調査は東京商工リサーチが2014年9~10月、全国の主な地ビールメーカー178社を対象にアンケート調査を実施、分析した。有効回答は77社(有効回答率43.2%)。調査は2010年から5回目となる。まず、国内ビール大手5社の2014年1~9月累計のビール系飲料(ビール・発泡酒・新ジャンル)の出荷量は前年同期比1.6%減と、2005年以来、10年連続で過去最低を更新した。苦戦するビール大手5社を尻目に、生産能力を超えた受注が舞い込んでいる地ビールメーカーもあり、地ビールメーカーの8割以上がブームを実感している。

 地ビールメーカーは、飲食店・小売店の開拓やビアフェス等のイベント出店で商品知名度を高め、輸出やネット通販にも取り組んでいる。ただ、円安で原材料価格の高騰や慢性的な人手不足から生産性の向上に課題を抱えているメーカーも多い。なお、「消費税率8%」の影響は、約5割のメーカーが「特にない」と回答している。

 出荷量が前年と比較できる71社の2014年1~8月の地区別出荷量の増加率は、北海道が前年同期比20.2%(71.7kl増)で最高。次いで、中国が同12.6%(33.2kl増)、関東が同10.6%(318.0kl増)と続く。全体では、九州を除く8地区で前年同期の出荷量を上回った。増加率トップの北海道は、増加した主な理由を「ビアフェス等イベント売上の増加」(7社中3社)、「飲食店、小売業者等の地ビールの扱い店の増加」(同2社)と回答。一方、前年(6.1%増)に出荷量を伸ばした東北は、天候不順による観光客の減少が影響し増加率は0.1%にとどまった。唯一、出荷量が減少した九州は、「小売店等販売先の減少」(5社中3社)、「宴会の減少」、「観光客の減少」(同各1社)を主な理由としている。

 また、需要増に伴う生産能力の限界を感じているメーカーも少なくないが、製品の安定供給や県外への販売強化の取り組みとして瓶ビールや樽マーケット市場の拡大に向けた設備増強を計画しているメーカーもある。「人材の育成・確保」を回答したメーカーでは、生産設備の増強、生産体制の効率化に加え、自社で賄いきれない分を他社からのOEMで補うメーカーもある。

 現在、生き残っている地ビールメーカーはビアフェスなどのイベント販売による自社商品の宣伝に加え、小売店や酒販店などの外販や輸出拡大に取り組んだ。地道な営業活動で地ビールの認知度を高め、地ビール出荷量は4年連続で前年を上回り“地ビールブーム”は持続している。中小・零細業者が多い地ビールメーカーは、ギリギリの生産体制で、慢性的な人手不足の課題を抱えている。円安を背景とした原材料価格の高騰も収益圧迫要因として浮上している。こうした潜在化するリスク要因を克服し、これからも地ビールブームを持続させるためには、早い時期の次の戦略が求められると、東京商工リサーチでは結論している。(編集担当:慶尾六郎)