企業の将来が見える? 民間企業の研究活動が活発化

2014年11月15日 19:24

 今、民間企業の研究活動が活発に行われている。文部科学省直轄の国立試験研究機関である科学技術・学術政策研究所(以下・NISTEP)が発行した「民間企業の研究活動に関する調査報告2013」によると、資本金1億円以上で研究開発を行っている企業は3426社の内、回答1628社で主要業種の社内研究開発費・外部支出研究開発費に増加傾向がみられたという。また、主力製品・サービス分野において、画期的な新製品・サービスを実現したとする企業が4割を超えたほか、画期的な新工程を実現したと回答した企業も約2割に上った。

 民間企業の研究活動の大きな特長は、大学などをはじめとする公的研究機関に比べて、実用化に?がるものが多いことだ。その研究成果は企業の業務に直結し、その都度現場に反映、導入、研鑽されていく。とはいえ、直接的に売り上げの数字としては見えにくいため、企業の体質などによっては、その存在や必要性を疑問視する声があがることも多いだろう。しかし、インターネットなどの普及で情報の垣根が取り払われ、エンドユーザーが簡単に詳細な情報を得て比較検討が出来るこの時代、より良い製品、より良いサービスの提供と、他社との差別化を図ろうとするならば、企業にとって研究活動は欠かせないものになりつつある。

 例えば、うま味調味料等の製造販売で知られる味の素グループは、競争優位を確保する独創的技術の確立と、新しい製品・事業の創出のため、研究開発費326億2600万円(当連結会計年度)を投じて研究開発を行っており、国内外あわせて約4700件にものぼる特許を取得している。具体的な商品としては、短時間で根菜をやわらかく仕上げられる当社独自の技術を用いた「Cook DoRきょうの大皿」や、新発想の固形の鍋用調味料「鍋キューブR」などを2012年度に発売している。

 また、原油の自主開発から輸入・精製・貯蔵・販売を総合的に行うコスモ石油では、連結子会社であるコスモ石油ルブリカンツ㈱、コスモエンジニアリング㈱及びコスモALA㈱において、石油製品・石油精製プロセス触媒の研究、総合エネルギー分野や環境対応技術、温暖化対策技術及び次世代エネルギーなどの研究を行っている。クリーンな環境とエネルギーの削減を目指した研究は、一企業の利益に留まらない利益を我々の暮らしにもたらすもので、その成果が将来に渡ってもたらす期待は大きい。

 将来的な期待という意味で、もっと身近なところでは、住宅メーカーのアキュラホームが今年6月に立ち上げた企業内研究所「アキュラホーム住生活研究所」の活動も面白い。同社は以前より、地域密着の活動をしている利点を活かしてアフターサービスに力を入れる「永代家守り」という活動に力を注いできたが、同研究所でも長期的に快適に住まうことを目的に、京都大学大学院工学研究科の髙田光雄教授を委員長に迎え、学識者らで構成された「住みごこち・住みごたえ・住みこなし推進研究会」を発足し、つくり手と住まい手が末永く協力し、使い込んだ住宅の価値が新築時の価値を上回ることができるような仕組みと文化の構築を目指している。今後さらに深刻になってくるであろう超高齢化社会の到来に向けて、家族と住宅に求められる仕組みや知恵についても話し合われている。

 企業が今、どのような研究や開発を行っているのかを知ることは、その業界や当該企業の将来性を占う意味でも大変興味深い資料にもなる。ちなみにNISTEPの調査報告では、2012年度時点での1社あたりの研究開発者数は128人であり、半数以上の企業は研究開発者を1人も採用していないことが分かっている。人数だけで単純に判断できるものではないが、もしもその目的が経費削減であるならば、将来的に企業の明暗を分けることになるかもしれない。(編集担当:石井絢子)