多くの人々の懸念をよそに着々と進むマイナンバー制度導入

2014年11月11日 12:13

 多くの人々の懸念をよそにマイナンバー制度の導入は着々と進んでいる。少なくとも自治体など公的機関は、マイナンバー制度の将来的な活用拡大は、「公共性の高さ」や「国民がメリットを享受できる」、「個人番号カード、マイ・ポータルの普及」がキーワードになると考えるようだ。

 矢野経済研究所では、国内のマイナンバー制度の動向に関する調査を実施した。調査期は2014 年 6 月~9 月、調査対象・調査方法は、各種公的機関・業界団体等の関係者への直接ヒアリング、ならびに文献調査を併用した。2016 年からスタートする国民の所得や納税、社会保障に関する手続きなどを一元的に管理し、税負担や社会保障給付を公平で確実に行うために国民一人一人に番号を付与し、社会保障や税の諸手続きにおける共通番号として利用するというマイナンバー(社会保障・税番号)制度。今回は、この制度が IT 及び市場全般に影響を及ぼす要因として、将来の利用拡大や官民連携サービスへの展開動向についての考察として行なったもの。

 マイナンバーの利用拡大に際して、「公共性の高さ」や「国民がメリットを享受できる」、「個人番号カード、マイ・ポータルの普及」がキーワードとなるという。それはマイナンバー制度の背景により、①公共関連及び、より公共に近い分野(公益、金融、保険、社会・福祉分野)での利活用が進捗することや、②市町村における住民サービスの向上や国民の生命・財産に関する分野など、国民がマイナンバー活用のメリットが感じられる分野での活用が進むこと、③個人番号カードの保持率拡大につながるカードの多機能化が推進されるためである。

 短期的(2017 年度頃まで)には、先進的な地方自治体の取り組みや条例により、住民サービスの向上に関連した利活用が促進される。また、個人番号カードの保持率拡大に向け、公立図書館カード、健康保険証、自治体病院の診察券等との統合が行われると予測した。

 また、長期的(2020 年度頃まで)には、医療・福祉分野では「薬の処方情報との連携」や「統計データとしての医療情報の活用」、「高齢者福祉に関する活用」、「マイ・ポータルの活用などによる予防医療や健康管理」が進むとした。金融分野では、「預金口座へのマイナンバー付番」「個人番号カードの活用等による手続きの簡素化」「マイ・ポータルの活用などによる情報サービス」が進むとした。

 個人番号カードには IC チップが内蔵されており、本人確認などに活用できる可能性がある。今後の法改正により、民間企業による個人番号カードの電子証明書利用が可能となれば、オンラインでの金融機関の口座開設や医療機関における本人確認、健康保険加入の資格確認などの実現につながり、国民の利便性が高まるとした。

 しかし一方で、個人番号には年収や年金の情報が連携するため、個人番号を含む情報は特定個人情報として扱われる。さらに、将来的に利用範囲が広がれば、医療や戸籍、銀行口座、パスポート等の情報も紐づけられ、マイ・ポータルにも個人に関する多様な情報が蓄積することになる。万一情報漏洩により、番号やカードの不正利用が起きれば、大きな問題となる。「個人番号カードを紛失すると、自分に関するあらゆる情報が悪用されるのではないか」といった国民の不安感が拡大することも懸念されるとした。(編集担当:慶尾六郎)