来シーズンのF1-GP復帰を目指すホンダと英F1チームのマクラーレン(Mclaren)が、本格的な活動を公式にスタート。11月25日(現地時間)に、アブダビのヤス・マリーナ・サーキットで行なわれたFIA(Fédération Internationale de l’ Automobile/国際自動車連盟)の公式テストに参加した。
今回のテストでは、ホンダ製F1用パワーユニットを搭載した開発用マシン「マクラーレンMP4-29H/1X1」が走行し、現在開発を進めているパワーユニットのシステムチェックを行なったのである。
ホンダのF1プロジェクト総責任者である新井康久氏は、「今回のテストでは、ウィンターテストが始まるまでに行なっておきたかったパワーユニットのシステム確認が目的でした。開発中のパワーユニットでのテストとなりましたが、開幕戦のオーストラリアまでにアップデートを図り、マクラーレンと一丸となってシーズンに挑みます」とテスト後に語ったという。
F1のレギュレーション(規則)は2014年に大きく変更され、エンジンの変更に加え、新しいエネルギー回生システムが採用された。エンジンは排気量が2.4リッターから1.6リッターへとダウンサイジング化。さらに、市販量産ハイブリッド車(HV)と同様のエネルギー回生システムなどの環境省エネ技術が導入された。
ただ、世界一の速さを競うF1に搭載される技術は、市販車よりずっと複雑だ。時速300km以上で走るF1マシンのための莫大なパワーを生み出すためのエンジンや回生システムは最先端ハイブリッド技術の結晶だ。また、量産HVはクルマが動いているときのエネルギーだけを回生するが、F1においてはマシンから発生する“熱”さえも回生してパワーに変える。
このような革新的な技術への挑戦にこそ、自動車メーカーによる環境技術競争が激化する昨今、意味がある。内燃機関の効率化やハイブリッドシステムなど、先進のエネルギーマネジメント技術を常に追求してきた各メーカーにとって、F1に参戦する価値がここにあるといえる。このF1-GP参戦で培った技術は、当然ながら量産車へのフィードバックが期待できる。
このように、2014年以降のF1では、搭載する1.6リッターターボエンジンに加えて2種類のエネルギー回生システムが組み合わされるため、これまで「エンジンサプライヤー」と呼ばれていたホンダのようなメーカーを「パワーユニット・サプライヤー」と呼ぶようになった。
この、“エンジン”から“パワーユニット”への呼称変更の背景には、F1-GP誕生以来、馬力に重点を置いたエンジン開発の時代から、エネルギー効率を追求したシステムを含めたパワーユニットの開発にシフトすることを意味する。世界最高峰の自動車レースで、環境技術の導入による究極のエネルギー効率の実現と競争が期待される。究極のスポーツ・ハイブリッド車が現在のF1マシンだといえる。今季はメルセデス軍団が圧倒したF1-GPだが、果たして2015年の行方は……。(編集担当:吉田恒)