こんな調子では、高値圏に達した後に上値追いのエネルギーが低下するのも、当然と言えば当然。怖いのは順張りの海外投資家がアメリカの経済指標や主要企業の業績の悪化、テロ、疫病の蔓延、どこかの国の債務危機などのショックを受けてポッキリ折れることだったが、今のところまだそれが起きていないおかげで、日経平均終値は11月18日からずっと17000円台を維持できている。
しかし、いくらモタモタしても、「時間が経過したこと」それ自体が味方になる。それが「踊り場」「日柄調整」の効果。上値追いの環境という観点で言えば、11月14日の「このままパラダイム・シフトして別の世界に飛んでいってしまうのか?」と思わせるような状況から2週間経過した間に、テクニカルポジションはかなり好転している。
28日終値の17459.85円は、移動平均も「雲」も全てを見下ろす位置にある。位置関係自体は2週間前とほとんど変わっていないが、その間隔が狭まっている。5日移動平均線は17371円で88円下。25日移動平均線は16719円で740円下にあり、21日の1032円から間隔が292円狭まった。25日移動平均乖離率は4.43%で、21日の6.32%から1.89ポイントも低下し、5%オーバーの「買われすぎ」ではなくなった。75日移動平均線は15972円。15291~15451円の日足一目均衡表の「雲」をはさんでその下に15255円の200日移動平均線がある。ボリンジャーバンドも、28日終値は25日線-1σ(15929円)と+1σ(17510円)の間の「ニュートラル・ゾーン」に収まった。25日線+2σは18301円でかなり上空にある。「買われすぎ」なのは、133.62で依然120をオーバーする25日騰落レシオぐらいになった。
上値を追える環境は整ってきた。付け加えて言えば、「雲」は今週末の5日から7日にかけて「ねじれ」が生じる。「一目均衡表の雲のねじれは変化日」と言われるので、その意味でもチャンス。では、上値はどこまで追えるだろうか? 17500円を突破するとまず17510円にボリンジャーバンドの25日線+1σがあるが、これは難なく突破できそうだ。次は17549円に11月14日のマイナーSQ値がある。これが上についた「まぼろしのSQ」だったため上値をかたくなにはね返す「鉄の天井」になると思われたが、SQ日から2週間以上が経過し、12日の次のメジャーSQが近づいている。突破の難度は低下していると考えていい。それが突破できれば、25日移動平均乖離率が5%を超え「買われすぎ」ゾーンに入る17555円の突破も難しくはないだろう。日経平均が停滞した間に円安が進んだ為替レートを追いかけるような動きも加われば、18000円に限りなく接近できる。
今週、そんな強気シナリオが描ける根拠として、一目均衡表の「雲」のねじれ、日経平均と為替レートの乖離とともに「SQ前週のパフォーマンスの良さ」も挙げられる。12月のメジャーSQ算出日は12日で、今週はその前の「SQ前週」にあたる。SQ週の弱さや、SQの次の「SQ後週」の強さはよく指摘されるところだが、SQ週の前の「SQ前週」もSQ後週に負けず劣らずの好パフォーマンスを残している。2013年と2014年11月までの23ヵ月間のSQ前週の騰落は17勝6敗で勝率73.9%という好成績。2014年に限れば下落したのが2月と10月だけで、9勝2敗で勝率は81.8%もある。メジャーSQの前週をみると、9月は+244円どまりだったが6月は+444円、3月は+433円で、3月や6月並みのパフォーマンスをみせれば日経平均の18000円チャレンジは十分可能である。需給面も、11月第2週、第3週の信用貸借倍率は3倍台で、3月SQ前週末の5.34倍、6月SQ前週末の4.05倍、9月SQ前週末の4.27倍よりも良い。マイナスだった2月のSQ前週末は6.73倍、10月のSQ前週末は4.64倍あった。
一方、下値の目安のほうでは11月18日以来8営業日、終値だけでなく安値でも17000円を一度も割り込んでいない点が評価できる。GDPショックで過剰反応を起こした11月17日を例外視すれば終値で12営業日連続上回っている。17000円はキリのいい心理的防衛ラインというだけでなく、今週は25日移動平均線もそれに迫ってくる。前週と同様に、ザラ場中に下落すれば「GPIFなど年金資産の買い」「日銀砲」「個人の押し目買い」が連想され、下げ止まって底値は堅いだろう。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは「18000円チャレンジ」も期待できて17000~18000円とみる。4日のECB理事会でユーロ圏の国債買い入れに踏み切るなど「非伝統的手法」のアクションを起こせば、5日は「雲がねじれる変化日」でもあり上値追いのチャンスになりそうだが、それがなければアメリカ雇用統計待ちの様子見に流されて前週末の終値に毛が生えた程度の上昇にとどまるだろう。国内では1日の法人企業統計でネガティブサプライズがあったりすると、高値圏なのでGDPショックのような過剰反応を起こしそうで怖い。本格的な選挙戦に突入するので、与党幹部の発言に株価が敏感に反応する場面もありそうだ。(編集担当:寺尾淳)