【日経平均】大臣発言で下げても日銀砲で逆転し56円高

2014年11月21日 20:17

 20日のNYダウは33ドル高の17719.00ドルで史上最高値更新。NASDAQ総合指数は26ポイント上昇した。中国やユーロ圏のPMIが悪くて安く始まったが、フィラデルフィア連銀景気指数も中古住宅販売件数もCPIも市場予測を上回り、感謝祭を1週間後の27日に控えて年末商戦期待も盛り上がった。原油先物が反発しエクソンモービルは0.2%、シェブロンは0.7%、コノコは1.5%それぞれ上昇。小売株はダラー・ツリーは5.2%、決算が良かったベスト・バイは7.0%上昇したが、前日上昇したターゲットやウォルマートは下げた。インテルは4.7%、マイクロソフトは1.0%、アップルは1.4%それぞれ上昇するなどハイテク系も堅調。21日朝方の為替レートはドル円が118円台前半、ユーロ円が148円台前半で、円安も踊り場。

 CME先物清算値は17250円。衆議院が解散する日の日経平均は15.14円安の17285.72円で始まる。TOPIXはわずかなプラスで始まるがすぐマイナスに転じる。序盤の日経平均は最近よく見る「寄り天(寄り高)」の後、ズルズル下げるばかり。9時台後半には17200円も割り込み、9時40分に17170円まで下げる。為替も円高方向に振れていた。その傾向は10時台も変わらず、ドル円は117円台、ユーロ円は147円台に。麻生財務大臣が「円安のテンポが速すぎる」と発言した他、甘利経済再生担当大臣は朝の閣議後の記者会見で、国の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する財政再建目標を「消費税率引き上げを想定せず達成する」と発言し、今回の解散を「この道しかない解散」と名付けた。前回の総選挙でも安倍自民党総裁(当時)の「輪転機をぐるぐる回し日銀に無制限にお金を刷ってもらう」発言に反応したが、選挙前は政治家の発言に敏感に反応してしまうのは兜町の「この道はいつか来た道」。

 上海市場はプラスで始まるが、香港市場は開始直後からマイナスに。日経平均は何度も安値を更新しながら下落を続け、11時3分に17108円まで下げた。「金曜日の利益確定売りは、三連休の前には特にきつくなる」というアノマリー通りの展開だが、大臣発言への反応もあり「持ち高調整売り」と言うにはやや厳しい下げ。それでも11時台は持ち直して、前引けは17165円だった。

 後場はやや水準を上げて再開し17200円を超える。国会議事堂では午後1時14分に衆議院が解散した。日経平均はマイナス圏ながら17200円をはさんで上下に動き、だんだん振幅が小さくなって落ち着いてくる。為替のドル円が円安方向に変わると、1時45分頃からにわかに上昇し2時に17300円を超えてプラスに浮上し高値を取る。大臣発言で株価が下がろうと、衆議院が解散しようと、日銀のETF買い入れ、人呼んで「日銀砲」は前場がマイナスなら律儀に380億円発射された。終盤は17300円台前半から後半へ一段高になり、2時45分に17381円まで上昇する。そのまま大引けになり終値は56.65円高の17357.51円と続伸し3勝2敗、前週末14日終値から133.32円下落する5週ぶりのマイナスで今週の取引を終えた。しかし、こんなふうに東京市場は最後〃ウルトラマン〃に助けられてばかりで、いいのだろうか? 正義の味方?の「日銀砲」炸裂で日中値幅は273円に拡大。TOPIXは+2.54の1400.18で4日続伸して14日以来の1400台回復。売買高は25億株、売買代金は2兆4958億円だった。

 東証1部の値上がり銘柄数は1047で全体の57%を占めた。値下がり銘柄数は640。33業種別騰落率の値上がりは24業種、値下がりは9業種。プラスセクターの上位はパルプ・紙、鉱業、石油・石炭、水産・農林、倉庫、鉄鋼など。マイナスセクターの下位は卸売、繊維、非鉄金属、情報・通信、輸送用機器、医薬品などだった。

 日経平均採用225種は値上がり138銘柄、値下がり77銘柄。プラス寄与度1位はファナック<6954>、2位はファーストリテイリング<9983>でともに+10円。3位はソフトバンク<9984>の+4円で、「御三家」の合計は+24円で日経平均上昇幅の44%を占めていた。マイナス寄与度1位はアステラス製薬<4503>で-3円、2位はTDK<6762>で-1円だった。

 メガバンクはみずほ<8411>0.5円安、三菱UFJ<8306>0.8円高、三井住友FG<8316>13円高。りそなHD<8308>は2003年の一時国有化の際に受け入れた公的資金約3兆円を3年前倒しして2015年中に完済する見通しと報じられ4.4円高。ミャンマーの大手銀行と業務提携する話も伝わった。野村HD<8604>は値動きなし。

 労組が春闘で定期昇給相当分を組合員平均月7300円要求するトヨタ<7203>は年初来高値を更新しながら9円安。安倍内閣の意向を受けて経団連が賃上げの旗を振る。その安倍内閣の成長戦略で「2030年までに200万台」を目指す燃料電池車をトヨタとともに世界に先駆けて発売するホンダ<7267>は13.5円高、富士重工<7270>は32.5円安、日産<7201>は12円安、マツダ<7261>は18.5円安と自動車大手はおおむね軟調だった。タカタ<7312>の欠陥エアバッグをめぐるアメリカ上院の公聴会が20日に開かれた。品質責任者の清水博シニアバイスプレジデントは冒頭で謝罪したが、疑惑を持たれている組織的な隠蔽は否定。ホンダの北米法人幹部も出席していた。これで一つの区切りになり、売られすぎからの反発で105円高になり値上がり率10位に入った。

 ソニー<6758>は23円高、2018年に東南アジアでの売上高を現在の6割増の約8000億円とする目標を打ち出したパナソニック<6752>は6.5円安。シャープ<6753>は5円安、NEC<6701>は1円高、日立<6501>は5.3円安とまちまち。東芝<6502>は開発中の「人工光合成」で2020年までに世界最高の変換効率1.5%を実現すると報じられ1.7円高。現状の効率は0.3%程度で、実現すれば火力発電所から出るCO2を光合成させメタノール燃料が生産できるという。