【日経平均】7年4ヵ月ぶりの17600円台にも乗せ130円高

2014年12月01日 20:13

 前週末11月28日のアメリカ市場は午後1時までの短縮取引。引け後は年末商戦初日の「ブラックフライデー」の買物にウォール街からダウンタウンへくりだそう。NYダウは65ドル高まで上昇したが結局0.49ドル高の小幅高。それでも史上最高値更新。NASDAQ総合指数は4.31ポイント上昇し6日続伸。原油安で生活必需品のガソリン価格が低下し個人消費に回る分が増えるという連想でウォールマートは3.0%上昇、前日の感謝祭パレードのスポンサー、メーシーズは2.2%上昇した。UAL8.2%上昇、デルタ航空5.5%上昇など航空株も堅調。原油先物市場は一時1バレル65ドル台まで下落しシェブロン5.4%下落、エクソン・モービル4.2%下落、コノコ6.7%下落と石油株は大幅安。30日、スイス中央銀行に資産の20%以上を金で保有する義務を課すかどうかを問う国民投票は否決され、スイスフランへの為替介入オペの手を縛られる心配がなくなりユーロは上昇。1日朝方の為替レートはドル円118円台後半、ユーロ円148円近辺まで円安が進行した。

 シカゴCMEも短縮取引だが先物清算値は17460円。取引時間前に発表された7~9月期の法人企業統計の設備投資額は+5.5%で、4~6月期の+3.0%から上昇幅拡大。マイナスになる予想もあっただけにポジティブな結果。8日発表の7~9月GDP改定値が上方修正される可能性も出てきた。日経新聞がまとめていた2014年度の設備投資動向調査では、非製造業が下方修正しても全産業では前年度比8.0%増で上昇幅は横ばい。

 早くも年の瀬。そろそろ「掉尾の一振」という言葉も聞かれそうな日経平均は15.25円高の17475.10円で始まり、1分後に17500円にタッチする。TOPIXもプラスで、心配されていた法人企業統計の数字が良かったおかげで師走相場は上々のスタート。序盤はどんどん高値を取り、ザラ場中の年初来高値17520円も11月の「まぼろしのSQ値」17549円も一気に突破し午前9時15分には17573円まで上昇する。9時20分頃には17600円を突破し、9時39分に17649円の高値をつけた。40分足らずで一気に174円急騰し、取引所の外の冷たい雨と対照的に場内はホットに2007年7月26日以来7年4ヵ月ぶりの年初来高値を更新。10時に中国の物流購入連合会の製造業PMIが発表され、50.3で10月に比べ0.5ポイント低く、市場予測の50.5も下回り2ヵ月連続の低下。日経平均は17600円を割り込む反応をみせたがアッという間に回復。原油安を背景にドル高円安が進行しドル円は一時119円にタッチした。上海市場は8日続伸で始まるが、前夜、デモ隊が香港政庁の庁舎を包囲し警官隊と激しく衝突。40人が逮捕され政府機能がマヒした香港市場はマイナスで始まる。HSBCの中国製造業PMIは50.0で速報値と同じ。日経平均は取りすましたように17600円台前半の水準を維持し、前引けは17601円だった。

 後場の午後0時台は前場の続きだったが、17600円台を守りきれず1時11分に割り込んでしまう。1時から日本記者クラブで総選挙公示直前の党首討論会が始まっていた。安倍首相が「アベノミクス選挙」と命名したように主要な争点は経済問題なので、マーケットは与党幹部の発言に敏感に反応。為替が動かなくても高値圏では利益確定売りで崩れやすい。しかし下げても1時台は17550円あたりまで。11月の新車販売台数が発表され-9.0%で5ヵ月連続のマイナス。2時台には17550円も割り込むが、朝に突破した11月SQ値が今度はサポートラインに変身して2時台後半は値を戻す。敵を兄弟に変える優しい法則。終盤は17600円に接近するが突破は果たせず、終値は130.25円高の17590.10円と続伸し終値でも年初来高値更新。日中値幅は175円。TOPIXも+11.31の1421.65で年初来高値を更新した。売買高は20億株、売買代金は2兆1972億円だった。

 東証1部の値上がり銘柄数は1174で全体の63%を占めた。値下がり銘柄数は522。33業種別騰落率は27業種が上昇し6業種が下落。プラス上位は空運、保険、その他製品、精密機器、輸送用機器、ゴム製品など。マイナスは鉱業、非鉄金属、石油・石炭、その他金融、卸売、情報・通信だった。

 日経平均採用225種は値上がり163銘柄、値下がり52銘柄。プラス寄与度1位はファナック<6954>で+9円、2位はファーストリテイリング<9983>で+8円。マイナス寄与度1位はKDDI<9433>で-4円、2位はヤマトHD<9064>で-3円だった。

 メガバンクはみずほ<8411>0.2円安、三菱UFJ<8306>3.6円高、三井住友FG<8604>4.8円高。総選挙前でもあり「地方創生」にからむニュースいろいろ。地方に本社機能や研究開発部門を移転する企業に法人税の税制優遇を講じると報じられた。地方経済に〃血液〃を供給する地方銀行、第二地銀81行の首脳の4割が将来の再編を選択肢の一つとして考え、特に九州や東北で前向きという日経新聞の記事も出た。金融庁は地銀再編を支援し地方の中小零細企業への融資を増やすため、12月から地銀グループの銀行間で余った資金を自由に融通できるよう規制を緩和するとも報じられた。しかし、地銀のこの日の上昇率上位は関西アーバン銀行<8545>、栃木銀行<8550>、大垣共立銀行<8361>。東京TYFG<7173>、京都銀行<8369>、と三大都市圏地盤の銘柄で占められたのは皮肉な結果。野村HD<8604>は4.8円高だった。

 輸送用機器セクターは業種別騰落率第5位。トヨタ<7203>はグループ内の部品メーカーを再編してブレーキ、ディーゼルエンジン、マニュアルトランスミッションの3事業の重複を解消すると報じられ115円高で年初来高値更新。競争力を高めるには「強い部品」が必要という考え方。ホンダ<7267>は24円高、マツダ<7261>は81.5円高で年初来高値を更新した。タイヤメーカーが属するゴム製品セクターは業種別騰落率第6位で、42.5円高のブリヂストン<5108>、27円高の横浜ゴム<5101>、58円高の住友ゴム<5110>、89円高の東洋ゴム<5105>はいずれも年初来高値更新。ブリヂストンはおよそ15年半ぶりに上場来高値を更新した。タイヤの原料は石油化学製品のナフサからつくる合成ゴムと東南アジアから輸入する天然ゴムの比率がおよそ半々で、ナフサが安くなれば原材料コストが下がる。

 アメリカで年末商戦が始まり、「PS4」がどれだけ売れるか期待されるのがソニー<6758>で40円高で年初来高値更新。九州の工場で生産する画像センサーを中国のスマホメーカー向けに増産する話も刺激になっていた。同様に買われたのが「Wii U」の任天堂<7974>で、売買代金13位で370円高。「ゲームボーイ用ゲームソフトをスマホ向けに配信する特許を取った」という〃怪情報〃も流れていた。パナソニック<6752>は2015年4月に完全子会社の三洋電機と賃金や年金制度や人事制度を統一すると発表し21.5円高で年初来高値更新。三洋電機は形式上存続するが、約7000人の全社員をパナソニックに転籍させるという。大企業同士の融合の最終段階。日立<6501>は3.6円高で年初来高値更新、シャープ<6753>は4円高、NEC<6701>は6円高。太陽光パネルは今後メガソーラーから出力500KW以下の中型へのシフトが進むとみられるが、コンビニ店舗向けなど中型パネル需要を開拓するため営業担当者を増員する東芝<6502>は3.5円高で年初来高値更新、軽量の新製品を開発した三菱電機<6503>は12円高。三菱電機は宇宙空間の太陽光パネルからマイクロ波で地球上に電力を送る「宇宙太陽光発電」の実験を行うというSFのような楽しい話題もあった。

 東京エレクトロン<8035>はアプライド・マテリアルズとの合併期日を3月24日に延期すると発表し207円高で年初来高値更新。3月19日の上場廃止日が後にずれる可能性が買い材料。バークレイズが目標株価を引き上げていた。キヤノン<7751>は売買代金10位に入り104.5円高で年初来高値を更新した。陸上自衛隊の多用途ヘリコプターの開発に、エアバス・川崎重工<7012>連合、ベル・ヘリコプター・富士重工<7270>連合の2組が名乗りをあげ川崎重工は5円高で年初来高値更新、富士重工は63円高で年初来高値更新。ゼネラル・ダイナミクスと共同で陸自の水陸両用車の共同開発に着手した三菱重工<7011>は2.5円高。防衛装備品の国際共同開発がひろがっている。

 日本郵政グループの日本郵便が2015年度中に格安スマホ参入を検討という時事通信の報道あり。相手は全国2万4000ヵ所余りの郵便局ネットワークを持つので通信業界がざわめく。MVNOサービスが日本郵便に利用される可能性がある日本通信<9424>は、ダイワボウHD<3107>傘下のダイワボウ情報システムとの提携も発表してストップ高の100円高。ダイワボウHDは4円高。大手携帯キャリアはNTTドコモ<9437>は14.5円高だがauのKDDIは60円安。ソフトバンク<9984>はこの日から太陽光発電の電力を東京電力<9501>よりも1KWにつき1円高く買い取ると発表し3円高だった。東京電力は1円安。買い取りは全国に拡大する。