【日経平均】前場「癒し」、後場「チャレンジ」で73円高

2014年12月02日 20:13

 週明け1日のNYダウは51ドル安。NASDAQは64ポイント下落した。年末商戦は全米小売業協会(NRF)による11月27日~30日の4日間の集計が発表され11.3%の2ケタ減。セール前倒しとネット通販に流れた言い訳されたが「ガソリンの負担が減り個人の財布が温かくなる」という想定シナリオは崩壊した。しかしISM製造業景況指数が市場予測を上回ったおかげで101ドル安止まりで株価の大崩れは避けられた。原油先物価格が反発し前週までの業種別基調「小売高、エネルギー安」がひっくり返り、ウォルマートは1.5%、34丁目のメーシーズは2.7%、JCペニーは6.0%それぞれ下落。エクソン・モービルは2.0%、シェブロンは2.6%、コノコは2.6%それぞれ上昇。ハイテク・ネット系はアップル3.3%下落、フェイスブック3.4%下落、アマゾン3.7%下落などふるわず。

 日銀、永田町、内閣府に続き、前日夕方に今度はムーディーズから「突然の贈り物」が送られてきた。日本国債の格付けが「Aa3」から「A1」に1段階格下げされ、中国や韓国より下のランク。政府が消費税再増税を先送りにしたため。ドル円は119円台と117円台の間で乱高下し、日経平均先物は大証夜間取引で17400円まで急落した。それでも何とか落ち着いてCME先物清算値は17535円。2日朝方の為替レートはドル円118円台前半、ユーロ円は147円台半ばで円高の進行は1円未満にとどまった。これがアベノミクス以前だったら、海外勢の円買いと指数先物売りでボロボロにされて朝を迎えただろう。

 取引時間前に11月末のマネタリーベースが発表され、262兆6865億円で4ヵ月連続で過去最高を更新した。10月31日の「サプライズ緩和」で年間増加額を80兆円に拡大したので12月中にあと13兆円弱増やす必要がある。前日の法人企業統計を受け8日のGDP改定値が上方修正される観測、総選挙投開票日後の19、20日の日銀会合で再び追加緩和が行われる観測も飛び交う中、2年ぶりの総選挙公示日の日経平均は109.04円安の17481.06円で始まる。TOPIXもマイナス。利益確定売りで午前9時1分に17476円の安値をつけた後、前場は下げ幅を圧縮していく展開。まるでそれは「ムーディーズ国債格下げショック」を徐々に癒すかのよう。半日以上たてばマーケットも「増税先延ばしの時点で格下げは想定済み」と冷静。9時30分発表のオーストラリアの7~9月の経常収支は125億豪ドルの赤字で市場予測より良い結果で17550円近辺まで上昇。10時30分に10月の毎月勤労統計調査の結果が厚生労働省から発表され、現金給与総額は0.5%増で8ヵ月連続プラスの一方、物価変動分を差し引いた実質賃金は2.8%減で16ヵ月連続マイナス。物価上昇に賃金上昇が追いついていない。上海も香港もプラスでスタートするとさらに一段高になり前日終値17590円に接近。10時48分にあと2.71円に迫って前場の高値17587円をつけたが、その後はプラスになれないまま推移し前引けは17586円。TOPIXも前日終値に0.07ポイントまで迫っていた。債券市場は続落し長期金利は少し上昇したが、それは10年国債の入札をふまえた動きで国債格下げの影響は限定的。「利回りに投資妙味あり」と国債の入札は順調だった。

 後場は17610円台に乗せてプラスで再開する。為替は少し円安方向に振れていた。0時36分に17647円まで上昇してピークをつけるが前日の年初来高値は更新できない。1時前に17600円近辺まで下げそのまま小幅高の水準で横ばい。そこから離れたのは1時40分頃で、2時台になるとチャレンジングに17649円の年初来高値を更新し、終盤はさらに上の17700円を目指した動き。2時55分に17687円まで上昇したがそこで待ったがかかり、終値は73.12円高の17663.22円で3日続伸し終値ベースでも年初来高値を更新した。日中値幅は211円もあった。TOPIXも+6.20の1427.85で年初来高値更新。売買高は20億株、売買代金は2兆1747億円で今週はやや低調。

 値上がり銘柄は1156で全体の62%を占め、値下がり銘柄は540。上昇した業種は26で下落した業種は7。プラスセクター上位は鉱業、精密機器、輸送用機器、石油・石炭、保険、水産・農林など。マイナスセクター下位はその他製品、食料品、不動産、陸運、銀行、サービスなどだった。

 日経平均採用225種は値上がり146銘柄、値下がり68銘柄。プラス寄与度1位はTDK<6762>で+13円、2位はKDDI<9433>で+8円。マイナス寄与度1位はソフトバンク<9984>で-14円、2位は11月の国内売上実績発表直前のファーストリテイリング<9983>で-6円だった。

 全国銀行協会が2018年をメドに振込ができる時間を午後6時まで延長すると伝えられたが3年以上も先の話。メガバンクはみずほ<8411>は0.7円高でも三菱UFJ<8306>は1.4円安、三井住友FG<8316>は45.5円安で銀行セクターは業種別騰落率29位と不振だった。野村HD<8604>は0.7円高。輸送用機器セクターは業種別騰落率第3位で、自動車大手はトヨタ<7203>は98円高で年初来高値更新、ホンダ<7267>は32.5円高、富士重工<7270>は94円高で年初来高値更新、マツダ<7261>は21円高、日産<7201>は3.5円高。アイシン精機<7259>はSMBC日興証券が目標株価を引き上げて25円高で年初来高値更新。11月は悪材料の「パンドラの函」だったタカタ<7312>は後場、アメリカ南部に限られていたリコールの範囲を全米に拡大し対象が数百万台追加と報じられたが、マーケットではすでに「異常の日常化」なのか反応薄で40円高だった。

 電機大手はソニー<6758>16.5円安、パナソニック<6752>9円高で年初来高値更新、シャープ<6753>1円高、日立<6501>3円安、東芝<6502>9.5円高で年初来高値更新、NEC<6701>6円高、富士通<6702>5.9円高と高安まちまち。GSユアサ<6674>は昨年の旅客機バッテリー発火事故の最終報告書を発表し、新たな補償問題に発展する可能性がある内容なので14円安。下手すると「第二のタカタ」になりかねない。TDKは野村證券とモルガンスタンレーが目標株価を引き上げて340円高で年初来高値を更新した。コニカミノルタ<4902>はドイツ証券が目標株価を引き上げて29円高で年初来高値を更新した。