トヨタがデンソー、アイシンなどの再編で目論む部品開発生産の集中とTNGAの大きな弱点

2014年12月11日 08:32

Toyota TNGA

ブレーキ開発・生産でデンソーとアイシンを統合するトヨタ。技術の“集中”はコスト削減につながるが、大きなリスクも抱えることになる。写真はトヨタ86とスバルBRZを生産する富士重のライン

 トヨタ自動車のTNGAとは設計共通化手法「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー」による開発効率向上システムことで、先月(2014年11月)報道が相次いだトヨタ自動車傘下のグループ企業再編にも大きな影響を与えている。グループ企業の再編とは3つの中軸事業であるディーゼルエンジン、マニュアルトランスミッション(MT)、ブレーキなどの開発生産で事業が重複しているグループ子会社の業務を整理一本化するというのが主旨だ。省エネや安全技術、自動運転や燃料電池などの開発競争がグローバルに過熱しているなか、競争力を高めるために「コストの低減と技術的な優位性」を追求する“集中”を実施するということだ。

 集中させる3事業でもっとも重要なのは「ブレーキ」だ。ディーゼルエンジンは将来的に究極のクリーンディーゼルやディーゼルハイブリッドなどの先端技術に関連するが、MTはトヨタ車のラインアップの一部特殊なクルマか輸出向けに搭載するだけなので、ここでは触れない。

 問題のブレーキシステムは、これまで傘下のデンソーとアイシン精機が開発・生産してきた。その両社のブレーキ事業を統合するという。具体的には2016年1月以降に、デンソーの電子制御ブレーキの開発および生産部門をアイシン子会社「アドヴィックス」に移管するというもの。

 グループ企業の再編の最大の狙いは、「強い部品づくり」にある。トヨタはクルマの生産において75%ほどのパーツをトヨタ本体以外から調達している。従来、グループ企業からの納入が多かったが、燃料電池車などの開発では、これまで自動車とはあまり関係がなかった企業の技術が必要になってきた。そのため、グループ内企業の集約は競争力アップのために必須とみたようだ。

 トヨタは、今年上半期の世界販売で過去最高の509万7000台を記録、3年連続で首位を堅持している。8月の決算報告で2014年暦年の販売計画をアジア市場の低調な情勢を踏まえ、当初計画から11万台減となる1022万台(前年比102%)へと下方修正した。また、2013年から3年間わたって、工場新設を凍結している。むやみに台数を追う方針を捨てて、「いいクルマづくり」に専念すると宣言。社長の豊田章男氏は今期業績予想について「意志を持った踊り場」と位置付け、「短期的な業績に一喜一憂せず、研究開発投資など必要なことは1年かけてしっかり仕込んでいく」とした。

 一方、トヨタを猛追する独フォルクスワーゲン(VW)は、年内に1000万台の大台突破を目指す。しかも、VWの主力「ゴルフ」の設計において世界で初めて設計共通化手法「MQB(モジュラー・トランスバース・マトリックス)」、ドイツ語で「Modulen Quer Baukasten」を導入、この車両開発効率化システムでトヨタに先行している。

 トヨタも設計共通化手法「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」 による開発効率向上活動に取り組んでおり、次期プリウスへの適用を目指す。今後、トヨタが推進する設計共通化活動「TNGA」は、部品発注先集中などによる傘下サプライヤーの将来を左右する重要な要素になりそうだ。

 ただし、このコストダウンと速い開発スピードを狙った部品開発生産の集中は、決定的な弱点を内包している。昨今、話題のタカタ製エアバッグのリコール問題をみれば明白だ。重要部品の一点集中開発・生産は、不良品の集中発生という重大な問題を抱えることにつながる。この弱点をトヨタ本体がいかにコントロールできるかが、TNGAの成否につながっている。(編集担当:吉田恒)