トヨタは今年2月10日に、「2017年末までにオーストラリアでの車両・エンジンの生産を中止する」ことを発表した。残念ながら……である。自動車生産会社の最後の砦「TOYOTA」が撤退決定したことで、オーストラリアの自動車生産産業が消滅するということになる。
現地生産中止後、Toyota Motor Corporation Australia Ltd.(TMCA)はトヨタ車の輸入・販売会社として活動を継続する。TMCAは1959年に設立され、カムリ・ハイブリッドなどの生産を行なっていた。撤退の理由としてトヨタでは「厳しい市場環境や豪ドル高、今後、オーストラリア自動車産業全体において市場規模の縮小が見込まれる」ことを挙げた。
その撤退発表の際に、TMCAの安田政秀社長は、「われわれは事業変革のためにできる限りのことを行なったが、現実にはわれわれがコントロールできない要素があまりに多く、オーストラリアでの自動車生産を断念する」と声明した。同時にトヨタ自動車の豊田章男社長も「これまでオーストラリアで(トヨタ車の)生産を続けるべく全力を尽くしてきた。しかし、市場環境などを勘案し、厳しい決断をした」と語っている。
オーストラリアでは自動車メーカーの生産撤退が相次ぎ、前述のGMほか、米フォードも2016年10月までにオーストラリア2工場を閉鎖すると発表。2008年には三菱自動車が撤退している。GMとフォードの発表を受け、部品調達先などの問題からトヨタも追随するという懸念が広がっていた。その懸念が現実となったわけだ。このトヨタの撤退発表によりオーストラリアで現地生産する自動車メーカーは皆無となる。
そのTMCAが2018年以降の新事業体制を発表した。現在シドニーにある販売・マーケティング機能をメルボルン本社に集約、また2017年末までに生産を中止するアルトナ工場については、「50年間にわたるクルマ生産で得た改善などのノウハウを今後の人材育成や商品・サービス向上に活かすべく、教育機能や商品開発機能を有する施設として活用していくこととした」という。
この豪州における新たな事業体制は、「TMCAが生産を中止した2018年以降も販売会社として、よりユーザー目線で、持続可能なビジネスを行っていくための長期的視点に立った判断だ」と説明。TMCAのデイブ・バトナー社長は、「従業員と共に、この厳しい時期を乗り越え、次の50年そしてその先も、豪州市場で持続可能なビジネスの基盤を築きたい」と語った。
オーストラリアは、これで完全な自動車輸入国となる。(編集担当:吉田恒)