【日経平均】大幅高で始まってもザラ場は動かず219円高

2014年12月24日 20:17

 週明け22日のNYダウは154ドル高で11日ぶりに史上最高値を更新。NASDAQは16ポイント上昇。中古住宅販売件数は5月以来の低水準で原油先物も下落したが、FOMC声明の効果がなお持続していた。23日のNYダウは64ドル高で5日続伸したがNASDAQは16ポイント下落。7~9月期GDP確定値が年率換算で改定値より1.1ポイントも上方修正されて11年ぶりの大きな伸びの+5.0%とポジティブサプライズ。ギリシャの国会が2回目の投票でも大統領を選出できずとも影響しなかった。NYダウは初めて節目の18000ドル台に乗せ史上最高値を連日更新した。原油先物市場も反発。ドル円は23日に120円台に乗せ、24日朝方の為替レートはドル円が120円台後半、ユーロ円が147円近辺と円安が進行していた。

 政府・与党サイドから出た政策の話題は、都市部の商業地に適用する固定資産税の軽減措置を3年間延長する話、中小企業向け減税特例措置を2年間延長する話、経済対策や観光振興目的の「地方創生交付金」4200億円を創設する話、経済産業省が工場への省エネ機器の導入、再生エネルギー事業者の蓄電池設置支援、石油元売り各社の製油所再編支援などを目的に、補正予算の追加経済対策でエネルギー関連として1500億円超を盛り込むように求めるという話。しかしそれよりもマーケットにとって大きな話題は日本郵政グループ3社の上場計画案が明らかになったこと。3月に東証に上場予備申請を行い、9月をメドに持株会社の日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命が同時上場するスケジュール。その日は2015年最大の新規IPOデーになるのは確実だが、「池の中のクジラ」にならないかどうか、ちょっと心配。

 CME先物清算値は17850円。飛び石連休明け。穏やかな天気のクリスマス・イブを迎えた日経平均は206.90円高の17842.04円で始まる。TOPIXも大幅上昇で開始。午前9時6分にいったん17800円まで下落するが9時46分には17875円まで上昇し、序盤から安定した値動き。しかしTOPIXは1428付近で上値を抑えられる。為替のドル円も朝から小刻みに円高方向に戻したが、NASDAQのマイナスも影響した模様。薄商いの中、日経平均も上値を追えず17800円台半ばでくすぶる。香港市場はプラスで始まるが、上海は開始直後にプラスからマイナスに変わる。前場の残り時間も17800円台半ばの水準での小動きは変わらず、前引けは17834円だった。

 後場はやや高い水準で再開しても前場と変わらない展開。午前中の閣議で満2年に2日残して第二次安倍内閣は総辞職。午後に特別国会の衆議院本会議が開かれ首相指名選挙で安倍晋三氏を第97代内閣総理大臣に指名。参議院本会議でも指名を受けた。その後、親任式、認証式を経て、防衛大臣を江渡聡徳氏から中谷元氏に入れ替えて第三次安倍内閣が発足。永田町には変化があっても兜町は変化に乏しく、日経平均は後場約36円幅でしか動かず「まつすぐな道でさみしい」(種田山頭火)。それでもTOPIXは終盤の午後2時49分にこの日の安値をつけた。日経平均は大引け前に少し上昇して終値は219.09円高の17854.23円で5日続伸した。日中値幅は75円。TOPIXは+12.97の1426.02で4日続伸。売買高は21億株、売買代金は2兆403億円で大引けで38日連続2兆円台を死守した。

 値上がり銘柄は1172で全体の63%を占めた。値下がり銘柄は260。上昇は28業種、下落は5業種。プラスセクター上位は水産・農林、陸運、輸送用機器、化学工業、空運、小売など。下位は鉄鋼、医薬品など。マイナスのセクターは石油・石炭、鉱業、不動産、証券、海運だった。

 日経平均採用225種は値上がり171銘柄、値下がり44銘柄。プラス寄与度1位はこの日の日経平均の大幅高をタフに牽引したファーストリテイリング<9983>で+51円、2位は東京エレクトロン<8035>で+12円。マイナス寄与度1位はKDDI<9433>、2位はニコン<7731>で、ともに-1円。

 メガバンクはみずほ<8411>は値動きなし、三菱UFJ<8306>は6.6円高、三井住友FG<8316>は30.5円高。証券はマイナスのセクターで野村HD<8604>は2.2円安だった。22日比で約1円の円安を受けて輸送用機器セクターは業種別騰落率第3位と好調で、自動車大手のトヨタ<7203>は122円高、1~3月期も減産し、2014年度の国内自動車生産が90万台程度で当初見通しを約15%下回り前年度比3%減になりそうなホンダ<7267>だが、織り込み済みなのか74.5円高。富士重工<7270>は105.5円高、マツダ<7261>は44.5円高、日産<7201>は15.5円高。5年ぶりに全面刷新した軽の「アルト」をお披露目したスズキ<7269>は65円高。重量を最大60キロ軽くし1リットル37キロとガソリン車トップの燃費。

 ソニー<6758>は、いったん公開中止を決めた映画「The Interview」を25日から公開すると決めてオバマ大統領にほめられ98.5円高。まさに「特報!全米騒然」「今年一番の問題作」で宣伝効果抜群。シャープ<6753>は1円高、日立<6501>は13.5円高、東芝<6502>は7.7円高、NEC<6701>は6円安、富士通<6702>は10.8円安。

 造船事業を2015年度中にも分社化する検討に入ったと報じられた三菱重工<7011>は3.9円高。民間用船舶に特化した新会社を設立して有望なLNG船などを移し、本体は防衛省発注の艦艇など官需が主体になる。JFEHD<5411>傘下のJFEエンジニアリングは鹿島<1812>と組んで、下水汚泥など3種類のバイオマスを利用する発電設備を実用化すると報じられ、JFEHDは31.5円高。鹿島は1円安。第1号は愛知県豊橋市から137億円で受注し2017年から運用を始める。横河ブリッジHD<5911>は33万株、5億円上限の自社株買いを発表して17円高だった。

 KDDIは「ファイアーフォックスOS」搭載スマホをauで25日から順次発売と発表したが25円安。機種はLG電子製で、料金は本体と基本的な通信料込みで月3800円。関西電力<9503>は昼休みに家庭用10.23%の電気料金値上げを申請。業務用も値上げする。同時に通期業績見通しを営業損益を1000億円の赤字、最終損益を1260億円の赤字に下方修正し、3期連続無配も発表して7.5円安。22日の主役だった石油関連は大きく下落し石油・石炭セクターは業種別騰落率最下位。昭和シェル石油<5002>は32円安。出光興産<5019>は29円安。コスモ石油<5007>は売買代金5位の売り浴びせで13円安、値下がり率5位。「あの子がほしい」「この子がほしい」と手当たり次第に先回り買いしたら、翌営業日には一斉に利益確定売り。それを繰り返すのがマーケットの性(さが)。

 クラレ<3405>は前場、通期見通しの営業利益を440億円から410億円に、純利益を430億円から400億円に下方修正。海外企業買収によるのれん代を償却するため。同時に2017年度に売上高6500億円、営業利益900億円達成を目標とする中期経営計画を発表したが、足元の業績のほうが大事で31円安。抄紙機用フェルトの日本フエルト<3512>は、発行済株式数の4.79%にあたる100万370株を1月8日に自社株消却すると発表して13円高で年初来高値更新。東ソー<4042>は自動車の排出ガス浄化装置に使われる「ゼオライト」を生産する新工場をマレーシアに建設し2017年をメドに稼働させると報じられ21円高。三井化学<4183>は韓国の石油化学大手SKCとポリウレタン材料事業の統合で合意し11円高。両社が事業を切り出し、4月に折半出資で新会社を設立する。

 マルハニチロ<1333>はアメリカ子会社の固定資産、出資持ち分の譲渡で特別利益を計上し、3月期の純利益見通しを前期比3.1倍の100億円に上方修正し72円高。日清オイリオG<2602>は3月からオリーブオイルを30~50%値上げすると発表して2円高。「なんてこったい!」と思っても大部分はイタリア、スペインからの輸入品。輸入商品の値上げはどんどん進む。キリンHD<2503>は3月末に傘下のキリンビールの磯崎功典社長が社長に就任すると正式発表し35円高で年初来高値更新。キリンビールの社長も兼任し一体運営する。記者会見で磯崎次期社長は「環境変化に対応できていなかった」「機動力が欠けていた」と指摘し、社内改革へのやる気をみなぎらせていた。

 22日に発表された全国コンビニ売上高(既存店ベース)は1.7%減で8ヵ月連続のマイナス。マイナス幅は10月の1.1%から拡大した。それでも店舗数は5.2%増加し全店売上高は2.8%増で21ヵ月連続プラス。新規出店依存体質はいつまで続くのか? セブン&アイHD<3382>は113.5円高、ローソン<2561>は10円高、出店をセーブしたファミリーマート<8028>は35円安だった。