12月17日、ニューヨーク州がシェールオイルやガスの採掘法である「水圧破砕法(フラッキング)」を禁止する方針を打ち出した。フラッキングに使用する化学物質によって環境が汚染され、健康被害が起こる可能性が指摘された。
このところ原油価格の下落が続いているが、その大きな理由となっているのがシェール開発だ。主に米国で開発に拍車がかかっているシェールオイルやシェールガスは、石油燃料に代わる新たな資源として期待が高まっている。シェール資源は地下層の奥に埋まっている油母頁岩(ゆぼけつがん)、油質頁岩(ゆしつけつがん)、油頁岩(ゆけつがん)などのシェール層の岩石を粉砕して、オイルや天然ガスを取り出したもの。しかしこれらの採掘には環境汚染の問題が指摘されており、12月17日、ついにニューヨーク州が「水圧破砕法(フラッキング)」を禁止する方針を打ち出した。
フラッキングとはシェール開発には欠かせない技術だ。地下数千メートルのシェール層に穴を掘って化学物質を加えた水を高圧で流し、岩石に亀裂を入れる。その亀裂から流れ出たシェールガスやシェールオイルを集めるという仕組み。しかし採掘に用いられる化学物質が地下水を汚染したり、空気中に有毒ガスが漏れ出して大気を汚染するなど、周辺環境に与えるリスクも大きく、健康障害にも繋がるおそれがあるとして問題視されてきた。
米国のニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、ニューヨーク州保健当局は、フラッキングが環境汚染を引き起こし、人々に甚大な健康被害を与えるとして、フラッキングの使用を禁止する意向であることを表明したという。
フラッキングは60年以上前から米国で使用されてきた技術だが、開発に関わる企業は、地下に注入する化学物質の中身について、あくまで企業秘密という態度を取り続けてきた。環境を汚染する可能性が高い有毒な物質であると知りながら、その経済効果の高さから蓋をされ続けてきたとも言える。これまで検出されたものでは、発がん性物質であるベンゼンやトルエン、エチルベンゼン、キシレン、ナフタレン、イソプロパノール、グリコールなどの有毒性物質がある。
安価な資源として注目されているシェール資源だが、フラッキング禁止の動きが米国で拡大すれば、供給量が激減する可能性も出てくる。原油価格が再び上昇するおそれもあり、世界経済に与える影響ははかりしれない。(編集担当:久保田雄城)