攻め続ける、ヤマハ。バイク不況の中でも、快進撃が止まらない

2014年12月28日 19:48

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バイク業界全体でみれば、決して好況というわけではない。日本国内のバイク需要は年々減少傾向にあるのは否めない。ところが、同社に限っていえば、国内の販売台数もすでに回復しつつあるという

 2014年は結局のところ、好景気だったのか、それとも不景気だったのだろうか。消費税率の引き上げで、各業界ともさすがに一時は落ち込んだものの、前回増税時ほどの大きな混乱がなかったのは、やはり好景気の賜物か。しかし、その好景気を牽引しているとされる安倍政権のアベノミクスの失敗が囁かれてもいるし、何より庶民の中では景気の恩恵に与ったという実感は、まだまだ乏しいのではないだろうか。

 そんな中、今年一年、快進撃を続けた企業がある。ヤマハ発動機だ。バイク業界全体でみれば、決して好況というわけではない。日本国内のバイク需要は年々減少傾向にあるのは否めない。ところが、同社に限っていえば、国内の販売台数もすでに回復しつつあるという。同社では2013年から2015年に向けた中期計画として、3年間で実に250ものニューモデルを市場に投入する超攻撃的な経営戦略を展開しているが、これが功を奏し、2014年12月期の連結純利益では前期比36%増の600億円になる見通しとなり、従来予想を100億円上回る大躍進となった。

 とにかく、屋台骨であるバイクの新型がことごとく売れていることが大きい。

 14年4月に発売され、新設計の水冷4ストローク直列3気筒DOHC4バルブエンジンを採用したことでもバイク乗りたちの話題となったヤマハの真骨頂ともいえるスポーツバイク「MT-09」は、排気量600~800ccのアッパーミドルクラスに位置する、ヨーロッパではスタンダードカデゴリに分類されるバイクだ。スタンダードバイクは、レジャー性と日常使いの両方が一つのバイクに求められる難しい分野。しかも、各メーカーがしのぎを削るシェア争いの激しいマーケットだ。ただのニューモデルでは売れることはない。

 ヤマハは「MT-09」の開発にあたり、普段使いするなかで感じる「楽しさ」とは何かをとことんまで追求した末、ライダーの意思とバイクが一つになる「Synchronized Performance Bike/シンクロナイズド・パフォーマンス・バイク」というコンセプトにたどり着いた。その特長のひとつが、総重量188kgという圧倒的な車体重量の軽さだ。モタードバイクのマスフォワード、マスの集中化、重いものを出来るだけ前に、出来るだけ集中して配置するという技術を活かし、バイクの本質である「走る」「曲がる」「止まる」にあるという基本的なパフォーマンスに人機一体となるリニアリティを追求した。「MT-09」は当初、年間販売計画1500台を見込んでいたが、およそ半年で目標の3倍となる約4500台を売り上げた。

 8月に発売された「MT-07」も年内の販売台数を約2300台と見込んでおり、年間販売計画の2500台を大幅に上回ることは必至だ。こちらは「Sports Passion MC with Smart/気負うことなくモーターサイクル本来の楽しみを存分に味わう」というコンセプトのもとで開発されたバイクだ。「MT-07」には新開発された水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブエンジンが搭載されているが、従来の2気筒エンジンにみられるような、技術的には不安定な燃焼からくるドコドコ感がない。また、軽くしなやかなフレームがもたらす、細さと下半身のフィット感の良さが特長となっている。

 また、これまで日本国内では見られなかった前二輪のスタイルが非常に個性的な小型3輪バイク「TRICITY」も好調だ。9月の販売開始前の事前受注だけで今年12月までの販売計画の4000台を1000台上回る5000台近くに達している。さらには、11月に国内販売が開始されたスポーツバイク「YZF-R25」など、世界戦略車も軒並み好調で、業績のさらなる上積みも十分期待できるのではないだろうか。

 多少は景気の影響を受けても「欲しいものは、欲しい」のだ。魅力ある商品を提供する限り、それを渇望するユーザーはいくらでもいる。景気を言い訳にするのは、結局のところ、ユーザーが求める商品を提供できていないことの責任転嫁でしかないのだ。ヤマハのニューモデル攻勢は2015年も続く。快進撃はまだまだ止まりそうにない。(編集担当:藤原伊織)