2014年12月30日、東京証券取引所の「大納会」の日の日経平均株価終値は17450.77円で安値引けしたが、昨年の大納会2013年12月30日の終値からは1159.46円、7.12%上昇して1年間の株式の売買を締めくくった。4月1日に消費税が5%から8%に引き上げられ、今年の漢字も「税」が選ばれた2014年、株式市場をめぐってどんな出来事があったのか、振り返ってみよう。
■「暗黒の1月」に始まり駆け込み需要が盛り上がった1~3月
1月、年明けの東京市場は「下落、下落、また下落」で始まった。6日の大発会は382円安で6年ぶりの下落スタート。でもこの時はまだ、「前年の大納会が年初来高値で引けた反動」と軽く考えられていた。しかし14日は、細川元首相が小泉元首相の支持を受けて「脱原発」を旗印に東京都知事選に出馬表明した「細川ショック」で489円安、24日は304円安、27日は385円安、30日はFOMCが量的緩和政策の100億ドル縮小(テーパリング)を決めて376円安と大幅安の日が何度も現れ、1月の月間騰落は1376円安。まさに「暗黒の1月」だった。
暗黒の1月は2月5日の安値13995円でようやく底を打つ。2月は日銀の金融政策の微調整、中国PMIショック、ウクライナ情勢の悪化などで三寒四温、一進一退しながらも15000円台に向けて少しずつ値を戻していく展開。春を待たずして焼け跡に芽吹く木のあり、かくのごと……(柳原白蓮)。2月の月間騰落は73円安だった。
4月1日の消費増税を直前に控えた3月は、個人消費は駆け込み需要で空前の盛り上がりをみせたが、株式市場は波乱の1ヵ月。7日高値で15312円まで上昇したが、17日には14203円まで落ち込み、その後は15000円に向けて回復していくという展開。波乱の第一の原因は「ウクライナ」で、ロシアのプーチン大統領は最初は「その気はない」と言っていたクリミア半島併合を強行して欧米諸国から制裁を受けた。中国からも経済指標の悪化やテロなどのバッドニュースが相次ぎ、外部要因に翻弄された3月の月間騰落は13円安だった。
■増税後の先行き不安を大手企業の好決算続出が癒した4~6月
4月1日、消費税率は5%から8%に引き上げられた。日経平均は4月3日の高値15164円をピークに11日の安値13885円まで一気に下落する。結局この13885円が2014年の最安値になった。ウクライナは政府軍と親ロシア派の間で内戦状態に陥り、TPP交渉は決着せず、消費増税後の日本経済がどうなるかも不透明でモヤモヤしたムードの中、4月の月間騰落は523円安になった。
ゴールデンウィークがはさまった5月上旬から中旬にかけては、ウクライナの内戦がなお続いて4月の不振ぶりをひきずり、日経平均は14000円を2回割り込み21日には13964円の安値をつけてしまう。そこから27日の高値14744円に向けて5日続伸も含めた急回復。最も大きかった材料は、3月期決算銘柄に「史上最高益更新」のような好決算の発表が相次いだことで、5月の月間騰落は328円高になった。
6月3日、日経平均は終値でも15000円台を回復。その後は10月までこのラインが下値支持線の役割を果たす。5日、ECBは中銀預金金利を-0.1%の「マイナス金利」にすると決定。地政学的リスクがイラクにも飛び火したが、日経平均は決算シーズンの好業績続出の余韻を残しながら安定的に推移し23日には15442円の高値をマークする。アルゼンチンの債務危機問題を受け6月30日に為替のドル円レートは101円20銭台まで円高が進行したが、日経平均は15000円台をしっかり堅持し、6月の月間騰落は529円高だった。
■反動減と天候不順の夏でも円安で株価は持ち直していた7~9月
7月は31日の15759円の高値に向かっておおむね右肩上がりだった月。アルゼンチンに加えてポルトガルでも金融不安が浮上し、中東やウクライナの地政学的リスクは相変わらずの状態でも東京市場は外部要因にあまり翻弄されなくなった。梅雨末期に日本列島各地で豪雨被害が発生したが、円安も味方につき7月の月間騰落は458円高だった。
しかし8月8日、日経平均は454円安を喫し14753円まで落ち込む。オバマ大統領の「イラク北部の限定空爆を承認」という緊急声明で地政学的リスクのメーターはレッドゾーンに振り切れ。ところが週末をはさみ、352円高の11日から21日までの間に日経平均は9連騰してV字回復。底堅さを世界に見せつけた。夏休みの小学生の間で「妖怪ウォッチ」の人気が爆発し関連銘柄が急騰したのも、エボラ出血熱の脅威が話題になりはじめたのも、東京で熱帯病のデング熱が発生したのもこの頃。8月の月間騰落は196円安だった。
9月は為替のドル円レートが月初の104円台から月末の109円台まで約5円も円安が進んだ月。その間、パレスチナに続き5日にロシアとウクライナも停戦に合意し地政学的リスクが後退した。18日にはスコットランドの英国からの独立の是非を問う住民投票が行われ否決される一幕もあった。日経平均は18日に16000円台に乗せ、25日には16374円まで上昇。安倍首相は3日に内閣を改造した。その後、「政治とカネ」の問題で女性閣僚2人が辞任したが株価への影響は限定的。9月の月間騰落は748円高だった。
■黒田日銀からの「突然の贈り物」でスイッチが入った10~12月
10月は民主化をめぐる香港の騒乱で幕を開け、香港市場の株価にも影響した。経済指標の悪化などによるNYダウの6日続落を受けて17日、日経平均は15000円を割り込み14529円まで下げている。エボラ出血熱の感染者が欧米でも発生して不安をかき立てていた。10月29日、FOMCは量的緩和政策の年内終了を宣言。その2日後、東京市場にとって今年最大の出来事「日銀のサプライズ追加緩和」が起こる。10月31日の昼下がり、「どうせ、いつも通りの現状維持だろう」という大方の予想をくつがえし、黒田総裁から予期せぬ「突然の贈り物」が届けられた。株式市場に最もインパクトがあったのはETFの買い入れ、人呼んで「日銀砲」の1回の買入額が10月の147億円から11月は380億円へ2.59倍もパワーアップし、威力を発揮したことだった(12月は374億円)。日経平均は31日、755円高で16533円まで上昇。前日までマイナスだった10月の月間騰落はプラスに一変し240円高で終えた。10月は高値、安値の月間値幅が2004円の激動の月だった。
11月は3連休明けの4日に為替のドル円レートが一時114円台という円安急進、448円高の大幅続伸で始まった。アメリカのオバマ政権の与党民主党は4日の中間選挙で完敗したが影響はほとんどなし。そこへ11日に突然、日本の政界から「解散・総選挙」の風が吹き始めた。それにあおられて日経平均は14日に17520円まで上昇。いつの間にか12月14日の投開票日まで既成事実化していた。17日に7~9月期のGDPがマイナスまで落ちるというGDPショックで517円安を喫したが、18日に安倍首相が「2015年10月の消費再増税の1年半延期、解散・総選挙の実施」を正式に表明すると、その後は堅調に値を戻した。11月の月間騰落は1046円高だった。
12月は5日に為替のドル円レートが120円にタッチし、8日には121円84銭と7年4ヵ月ぶりの水準まで円安が進んだ。6月30日の101円20銭台と比べると半年足らずで20円以上も円安が進んだことになる。日経平均はその8日に2014年最高値の18030円をマークした。14日の総選挙は自民・公明の連立与党が衆議院の全議席の3分の2以上を獲得する大勝。しかし翌日から株価は下落し、ロシアの通貨ルーブルが大幅下落した17日には16672円まで下げた。その後、29日には17914円まで戻したが、年末最終盤は「掉尾の一振」とはいかず2日間で464円も下げて終えた。10月は1バレル80ドル台だった原油先物価格は12月に急落して60ドルを割り込み、年末には1バレル52ドル台まで下落した。最初はガソリンが安くなれば個人消費が刺激されると歓迎されたが、次第に石油産業への打撃など世界経済への負の影響が懸念され、株価には悪材料とみなされるようになった。12月の月間騰落は9円安だった。(編集担当:寺尾淳)