2014年、WECの頂点に立ったトヨタ、「ル・マン24時間」制覇が今期の宿題

2015年01月05日 07:40

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2014年、WECでトヨタ・モータースポーツは、ドライバーズタイトルとマニュファクチャラータイトルの2冠を獲得した

 2012年の参戦から3年、ついにトヨタ・モータースポーツが、日本のメーカーとして初めてWEC(世界耐久選手権)の頂点に立った。

 世界耐久選手権(World Endurance Championship = WEC)は、FIA(Federation Internationale de l’Automobile/国際自動車連盟)が統括する世界選手権のひとつ。ほかにF1-GP、WRC、WTCCがそれぞれの部門で世界最高水準の選手権として開催されている。

 WECはル・マン24時間の運営やヨーロッパとアジアで展開されているル・マン・シリーズを統括するACO(Automobile Club de l’Ouest/西部自動車クラブ)とFIAが協力しあって規則を作成し、選手権の運営に当たっている。LMP1、LMP2、LMGTE-PRO、LMGTE-AMという4つのクラスがあり、それらの車両が混走してその性能を競う。

 2014年のFIA世界耐久選手権は全8戦が開催され、英シルバーストンで開幕し、6月のル・マン24時間、10月の富士を経て、11月30日のサンパウロで閉幕した。ル・マン以外はすべて6時間の耐久レースとして開催され、ドライバーとマニュファクチャラーの世界選手権、GTドライバーのワールドエンデュランスカップ等の選手権、カップ、トロフィーを競う。

 トヨタ・モータースポーツが今期獲得したのは、第7戦のバーレーン6時間でカーナンバー8番のA・デビッドソンとS・プルミエ選手がドライバーズタイトルを決め、最終戦のサンパウロ6時間でトヨタ車2台が2位と4位でフィニッシュしマニュファクチャラータイトルを獲得した。

 トヨタ・モータースポーツとしては1994年にWRC(世界ラリー選手権)でタイトルを獲得して以来20年ぶりに世界タイトルを賭けたモータースポーツ領域WECで世界タイトルを決めたのだ。

 最終戦のサンパウロ6時間は、ライバルのアウディ、ポルシェのターボエンジンにアドバンテージがある標高800mの高地だ。ターボエンジンはその過給圧の調整で出力をキープ出来る。が、高地ゆえの気圧の低さはターボのないNAハイブリッドのトヨタ車には不利だ。ほぼ50馬力近い出力を失う。しかし、トヨタは予選、決勝を通じてアウディを凌ぎ、ポルシェを追い詰めた。トヨタTS040ハイブリッド・レーシングの空力特性の高さが、50馬力を失ってなお速いマシンであることを証明した。

 これまで耐久レースのマシンは、1980年代の世界プロトカー選手権の時代から“高いエンジン出力で引っ張る”コンセプトでマシンを作るのが一般的だ。今期アウディもそうしたスタンスで臨んでいたようにみえる。そんな“馬力重視”の耐久レース界に“エアロダイナミクスによる速さ”を導入したのは、F1時代から積み上げたトヨタの豊富な“空力ノウハウ”だ。

 そして、今期2015年のWECの最高峰「LMP1ハイブリッドクラス」は、2014年とほぼ同じレギュレーションで行なわれる。各チームには同じ規則のなかで、14年よりも速く強いマシン作りが求められる。

 トヨタにとって2014年に達成できなかった「ル・マン24時間」の制覇という宿題が残っている。(編集担当:吉田恒)