「ル・マン24時間」初勝利を飾れるか? トヨタ・レーシングがサルト・サーキットに向かう

2014年06月07日 07:21

Le Mans_TS040

トヨタ・レーシングのただひとりの日本人ドライバーである中嶋一貴もドライブする「TS040 HYBRID」(カーナンバー「7」)は、総合出力1000馬力のハイブリッド・レーサーだ。

 6月14日(土)15日(日)の両日開催されるFIA世界選手権(WEC)第3戦「ル・マン24時間レース」決勝へ向けてすべての準備を終えたトヨタ・レーシング。彼らは戦いの舞台となる一周13.6km、フランスのル・マン市にある世界一過酷なサルト・サーキットへと向かった。

 昨年は同レースで2位表彰台を獲得したトヨタ・レーシングは、進化を遂げた。2014年シーズン用に新たに投入された、1000馬力を誇る「TS040 HYBRID」は、今季のWECシリーズ序盤戦で既に2連勝しており、ル・マン初勝利に対する期待は高まっている。

 今季のWEC序盤2戦、シルバーストーンとスパ・フランコルシャンの6時間レースの勝利で、チームはマニュファチャラーズ・ランキング首位にある。2位のチーム・アウディに対し48ポイント、リードしている。「ル・マン」を含めて全8戦で争われる選手権で、このリードをさらに広げるべく、強力なライバルであるアウディとポルシェに、ここ「ル・マン24時間」で真っ向から立ち向かうこととなる。

 トヨタ・レーシングの木下美明チーム代表は出発に当たって次のように述べている。「新型『TS040 HYBRID』と我々の『ル・マン24時間』への道のりは、1年前のル・マン直後から始まった。以来、チーム及び関係者全員で、とてつもないハードワークをこなし準備して来た。よって今年のル・マンに向けてやり残したことはないと思う。我々の目標はただひとつ、勝利だ。本番レースでは、『ライバルのパフォーマンスや運、天候』など(我々が)コントロール出来ない要素が多い。が、今までやって来たことを信じて、レースウィークもやるべき事を続けて行くだけだ。ポルシェの復帰により、今年のレースは苛烈なものとなるだろう。しかし、逆に言えば、そこでの勝利が、さらにこの上ないものになることを意味している」

 トヨタ・レーシングが今季「ル・マン24時間」に持ち込む2台の「TS040 HYBRID」は、最先端ハイブリッド技術の集大成であり、2013年仕様に対してさらなるパワーを得た。しかも25%の燃費向上を果たした。スーパーキャパシタに蓄積された電力により、前後の駆動軸に加えられるモーターアシストは合計480馬力に及び、新開発の3.7リッターNAガソリンエンジンが後輪に伝える520馬力とあわせて、システム全体では最大1000馬力ものパワーを発揮する。

 昨年のル・マン24時間レースで4位フィニッシュとなったゼッケン7号車はアレックス・ブルツ、ステファン・サラザン、中嶋一貴の3名。昨年2位表彰台を獲得した8号車はアンソニー・デビッドソン、ニコラス・ラピエール、セバスチャン・ブエミの3名がステアリングを握る。

 6名のドライバーは全員、公道と常設サーキットの一部を組み合わせた1周13.629kmのサルト・サーキットを熟知しており、公式テストデーでも順調に走行。

 11日(水)から始まる走行は、午後4時から4時間の練習走行の後、午後10時からの2時間の予選へと続き、翌12日(木)まで続く。2回各2時間の予選走行セッション(午後7時と午後10時から)が行なわれ、決勝レースのスターティンググリッドは、予選セッションなかの最速ラップタイムで決定する。

 6月13日(金)に、ル・マン市内中心部で伝統的なドライバーズ・パレードを実施。14日(土)は午前9時からの45分間のウォームアップ走行に続き、午後3時に「ル・マン24時間レース」のスタートが切られる。

 トヨタ・レーシングにとっては3回目のル・マン挑戦だ。ただひとりの日本人ドライバー、中嶋一貴 (TS040 HYBRID/カーナンバー「7」)の声を伝える。

 「3度目の“ル・マン24時間”となるが、参戦のたびに経験を重ねている。昨年は難しいレースになるだろうということが分かっていた。が、今年は違う。我々はすべての準備を終え、今季これまでの(WEC)2戦で強力なパフォーマンスを示して来た。勝利するための準備は出来たと感じている。準備が十分なので、ストレスを感じることもなく、落ち着いている。私は他のレースでも落ち着くことをつねに意識しており、今の状態はとても良い兆候だと思う」と述べた。期待が高まる。(編集担当:吉田恒)