中国での反日運動の高まりや人件費の高騰などもあり、多くの企業が生産拠点を中国からベトナムやカンボジアなど、さらに人件費の安い東南アジアに移してきた。しかし近年、その東南アジア諸国でも人件費が高騰してきている。
中国での反日運動の高まりや人件費の高騰などもあり、多くの企業が生産拠点を中国からベトナムやカンボジアなど、さらに人件費の安い東南アジアに移してきた。しかし近年、その東南アジア諸国でも人件費が高騰してきている。これから世界の企業は、どこに生産拠点を移していくのだろうか。そして東南アジアの経済は今後どのようになっていくのだろうか。
以前、安価な労働力の代名詞といえば中国であった。安い人件費を求めて多くの国が中国に進出していた。しかし近年、人件費の高騰や経済減速のためか中国での事業拡大を考えている企業は減少、その代わりに注目を集めているのがカンボジアやベトナム、バングラデシュなどの東南アジア諸国である。
これらの国は人件費も安く、また労働力の確保も中国より容易であるだけではなく、中国よりも対日感情がよい。そんなわけで日系企業の誘致に積極的なこれらの国が現在人気となっているわけだが、その結果これらの国でも人件費がめざましい勢いで上昇しているのだ。
たとえばベトナムでは、2010年と比べて、現在の最低賃金は2.3倍。カンボジアで2.1倍になっている。元々人件費が安くなかったタイでも46パーセントも上昇している。インドネシアに至っては10年比で2.6倍にもなっており、北京の最低賃金に迫る勢いである。
その結果、コストだけを考えると中国からこれらの国々へと工場を移転させることにはあまり意味がなくなっている。日本の企業にとっても、今後の事業戦略を左右しかねない現実が起こっているのだ。
価格競争力だけを見れば、もはや東南アジアには魅力がないように感じられるが、これらの国には中国にない魅力もあるようだ。企業が進出するときには、日本人従業員もそこに駐在する必要が出てくるが、中国の場合反日感情もあり、日本人労働者の生活が厳しいことも多い。それに対してたとえばベトナムでは、対日感情もよく、日本人にとって住みやすい。それも一つの原因になっているようである。
人件費だけを追求していっても、いつかは必ず限界が訪れる。企業の社会的責任を考えるならば、その国の経済成長を見越して進出をする必要がある。人件費の安さだけを追い求めていれば、いずれ東南アジアも見捨てられてしまうだろう。進出していく企業も、誘致する政府も、ともに成長していくパートナーとして相手を考え、コスト以上のメリットを互いに見いだしていくことが大切なのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)