中国PCメーカー、レノボが2015年からNEC米沢工場で生産を開始する。高品質だと世界からの信頼も厚い「日本製」だが、日本企業は厳しい事業展開を余儀なくされている。PC市場シェアトップを躍進する中国企業との違いとは何か。
中国のパソコンメーカー「聯想集団」(レノボ)がノートパソコンの一部機種の生産を日本で行う予定であることが分かった。中国メディアの太平洋電脳網や深セン特区報は、「メード・イン・ジャパン」は信頼のおける商品だと広く世界に浸透しており、中国国内の消費者にとっても日本製品は人気だとし、日本で生産すること自体に高い価値が含まれていると報じた。また、最先端の技術力に合わせて、ものづくりに対する責任感の強さがあると述べ、規範意識を維持しながら厳しい管理を徹底していることが最高品質を作り出す理由の一つだとした。
レノボの中国工場ではこれまで2週間程度の製造期間がかかっていたが、日本工場なら1週間ほどで納品できるようになるという。人件費は中国工場よりもかかるが、納期短縮と高品質がメリットとなる。生産能力と信頼が高まることで、結果的に販売台数が伸びると期待されている。
日本国内での生産は、山形県にあるNEC米沢工場で2015年から開始予定だ。11年7月1日にレノボとNEC<6701>は共同出資して合弁会社を設立。契約は16年7月までだったが、26年まで延長されることとなった。米沢工場で生産されるのは「ThinkPad」シリーズの上位機種「X1Carbon」と「Tシリーズ」だ。年間生産台数はレノボ・ジャパンがインターネット販売しているPCの10~15%を見込んでおり、およそ5万台の予定。設備投資や人員を増やすことなく、現在の稼働能力のまま対応する。
米国のIT調査機関IDCの調べによると、14年7‐9月期の世界のPC市場シェア率はレノボがトップで20%を占めており、続いて米国のヒューレット・パッカードが18.8%、Dellが13.3%となっている。スマートフォンやタブレットの普及によりPCの売れ行きは伸び悩んでおり、法人向け事業で大口契約を結んでいく必要がある。レノボはすでにIBMのサーバー事業を買収するなど積極的に動いており、米国での地盤固めも進んでいる。
一方、レノボの躍進ぶりとは対照的なのが日本国内メーカーだ。ソニー<6758>は「VAIO」事業を売却し、東芝<6502>も個人向けPC事業を縮小すると決定した。競争が激化するPC市場だが、日本企業に欠けているのは攻めの姿勢なのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)