11月14日、立ち入り検査で幻覚症状などを引き起こす指定薬物を含む疑いがあると判明した商品と同種商品を、インターネットも含めて全国一律に販売を禁止できるようにする薬事法改正案が衆院本会議で可決された。
11月14日、立ち入り検査で幻覚症状などを引き起こす指定薬物を含む疑いがあると判明した商品と同種商品を、インターネットも含めて全国一律に販売を禁止できるようにする薬事法改正案が衆院本会議で可決された。さらに、当該薬事法改正案は形状や包装などから、販売停止命令を出した商品と同等以上に幻覚や興奮作用といった精神毒性が疑われる商品にも、販売停止命令が出せるように対象を拡大する。
「危険ドラッグ」とは、麻薬や覚せい剤等の法律で禁止されている成分と異なるため一見合法で安全である薬剤のように見えるが、実体は覚せい剤や大麻などの規制薬物似せて合成された化学物質を含んでいる薬物をいう。その上、「危険ドラッグ」は、法律規制の網の目をすり抜けるために新たな物質が合成され、製造過程が不確かで何がどれくらい含まれているのか、身体にどのような悪影響を及ぼすのか全く分からないため、覚せい剤などの規制薬物以上に危険な薬物である。
それにもかかわらず、危険ドラッグを完全に撲滅できる法律が制定できないのは、理由がある。覚せい剤などの規制薬物類似の薬物を全て包括規制の対象としてしまうと、問題があるためだ。危険ドラッグの化学構造は、正当な医療行為として使用されている向精神薬や麻薬と化学構造が類似しているものが多い。そのため、危険ドラッグを完全に撲滅できる法律は、正当な医療行為のために開発しようとする向精神薬や麻薬の新薬も規制してしまう危険がある。
11月14日に衆院本会議で可決された薬事法改正案では、形状や包装などから販売停止命令を出した商品と同等以上に幻覚や興奮作用といった精神毒性が疑われる商品も規制対象に含む。そのため、薬事法改正案が間違った運用をされれば、正当な向精神薬等にも規制が及びかねない。すなわち、当該薬事法改正案は、「何が刑事的な規制対象になるのか一義的に明確でなければならない」とする罪刑法定主義との関係で、問題がないわけではない。
しかし、危険ドラッグの危険性や、危険ドラッグが引き起こしてきた凄惨な事件を考えれば、薬事法改正案は、危険ドラッグの規制のために一歩前進したともいえる。薬事法改正案を最終的なゴールとせず、一次的な措置として評価し、今後のさらなる前進を見守りたい。(編集担当:久保田雄城)