現在の世界の肥満人口をご存知だろうか?先頃、ワシントン大学健康指標評価研究所が行った調査結果によると、その数なんと6億7100万人。BMI(体格指数)が25以上30未満の過体重の人まで含めると更に数は膨れ上がり、21億人にまで達する。なんと全世界の成人人口のおよそ3分の1が体重が重すぎるという問題を抱えていることになるのだ。
同研究所のクリストファー・マリー所長によると「この30年間、国民の肥満率減少に成功した国は一つもない」という。事実、世界188カ国におけるデータを分析すると1980年には男性28.8%、女性29.8%だった過体重(肥満含む)の割合が2013年には男性36.9%、女性38.0%にまで上昇している。
肥満者数の半分は10カ国に集中している。そのうち1位は米国の8,690万人。2位は中国の6,200万人,3位はインドで4,040万人だ。以下、ロシア、ブラジル、メキシコ、エジプト、ドイツ、パキスタン、インドネシアと続く。経済発展著しい中東や東南アジアでも肥満者数が急増している様子が見て取れる。
ちなみに日本では、男性の肥満率は4.5%。女性は3.3%で他の先進国と比べてもかなり低いレベルだ。ただ、BMIが25以上の男性の割合は80年の18.0%から13年は28.9%にまで上昇している。女性には高いダイエット意識を背景に肥満率の上昇は見られないが、男性はかなり注意が必要のようだ。
都心部を中心に出店数を伸ばす24時間制のフィットネスクラブや、一日の消費カロリーを手軽に管理することのできるウェアラブル端末の登場など、体重管理や健康増進の環境は日進月歩で進んでいる。だが、これらが本当に有効活用されるかどうかは、結局当人の意識とやる気次第なのだ。
一方、去年9月に国連が発表した報告書によると、世界の飢餓人口は8億500万人。21億もの人々が「食べすぎ」によって頭を悩ましている一方、食料を満足に得ることの出来ない人々が未だこれだけ存在する。
アメリカ大手コンサルティング会社、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの発表した報告書によると肥満による経済的損失(医療及び生産性損失)は世界中で年間なんと2兆ドルにも達する。これは喫煙や武力紛争による損失2兆1000億ドルに匹敵する大きさである。
この2兆ドルをもし飢餓対策に使えたなら…。話はそう単純なものではないかもしれないが、思わずそう考えてしまわずにはいられない。(編集担当:武田薩樹)