1995年1月17日。日本は大きな悲しみに包まれた。6434名もの人が犠牲となった、あの阪神・淡路大震災から20年。いくら時が流れても、被災者や遺族の悲しみが消えることはない。
国土交通省によると、阪神・淡路大震災で尊い命を失った犠牲者の4分の3が建物の倒壊などによる圧死であったことから、この震災をきっかけに家屋の耐震性強化と家具転倒防止などへの関心が一気に高まった。消防庁によると、住宅被害は全壊が10万4906棟、半壊14万4274棟に上るが、この多くは1981年の建築基準法の改正による新耐震設計以前の建物だった。その後、建築基準法の強化や技術の進歩によって、現在の新築住宅の多くは、大地震に対して倒壊しない性能を備えている。
倒壊を免れれば高い確率で命を守ることはできるが、その家で住まい続けられるかということも考えなくてはならない。被災後も避難所ではなく、自宅で生活を続けたいというニーズは高い。これには、災害発生後、例え電気やガスなどのライフラインが途絶えたとしても、不自由なく、安心な生活を続けるための対策が必要となる。具体的には、東日本大震災のように繰り返し起きる余震にも耐えられること、そしてインフラが復旧するまでの間のエネルギーの確保が挙げられる。また、いかに建物の損傷を最小限にして補修費用を抑えることも大切だ。
住宅メーカー各社ももちろん、この点にも重点を置いて開発を行っている。免震構造や制震システムを取り入れた住宅だ。例えば旭化成ホームズでは、柔軟性の高い鋼材を組み込んだ制震フレーム、また、ミサワホームでは高減衰ゴムによる制震装置を導入している。これらで地震動エネルギーを吸収し、建物の揺れを抑えることで、損傷を軽減する。
中でも、住宅メーカーのトップランナーである積水ハウスでは、2003年より戸建住宅向けの免震構造を導入したほか、2007年には国土交通大臣認定を取得したオリジナルの制震構造「シーカス」を開発。「シーカス」は地震動エネルギーを熱に変換する特殊高減衰ゴムを用いた特殊なダンパーを組み込むことで、建物の変形を1/2に抑える。大規模な地震が発生しても内外装への被害を最小限に抑え、また、余震など繰り返しの地震でも効果を発揮する。東日本大震災においても、この制震構造を用いた建物の損傷が抑えられ、その効果が認知されたこともあり、現在は同社の鉄骨戸建住宅の約9割に採用されている。また、大がかりな装置が必要な免震構造に比べて、制震フレームはコストパフォーマンスも高く、2013年9月には「シーカス」を重ねて配置することが出来るようにすることで、耐震性を確保しながら間取りの自由度をさらに高めた「ハイブリッドシーカス」するなど、普段の生活空間の快適さにもこだわる。
また、インフラが復旧するまでのエネルギーの確保の面でも、積水ハウスでは2009年より太陽光発電システムや燃料電池を備え、日常の省エネ性能向上だけでなく、災害時の電力確保が可能な住宅「グリーンファースト」の販売をいち早く開始。現在、同社の8割以上の住宅にこのモデルが採用されている。
災害はいつ、どこで起きてもおかしくない。突発的にやってきて、命や資産を唐突に奪っていく。先進の技術を取り入れた住宅は、命や資産を守るための費用だとすれば、必要な投資といえる。今年は、東日本大震災からも丸4年が経ち、5年目となる節目の年でもある。もしもに備え、今一度、住宅の防災について本気で考えてみてはいかがだろうか。(編集担当:藤原伊織)