1月29日、森永乳業<2264>が牛乳やヨーグルト、コーヒー飲料などの価格を3月9日から約2~8%引き上げると発表した。価格が据え置かれる商品も一部あるが、そちらも内容量を減らす見通しで、実質的には値上げとなる。1月26日には明治HLDG<2269>も牛乳やヨーグルトなど54品目の価格を4月から約2~6%引き上げると発表したばかり。昨年から続く乳製品の高騰、品薄はまだまだ消費者に大きな打撃を与えそうだ。
生乳及び乳製品不足の大きな原因となっているのは、円安による輸入飼料の高騰と、酪農家の減少だ。農林水産省発表のデータによると、2004年度には825万トンあった国内生乳生産量は、ここ10年右肩下がりを続け、13年度と14年度は750万トンを下回った。
輸入飼料高騰、後継者不足などによる酪農家の減少に加え、ここ数年続く夏場の猛暑も生乳生産量落ち込みの原因となっている。猛暑により、多くの牛が乳房炎にかかったことや、牛の体力が低下し種付けが芳しくなかったことも影響しているようだ。
こうした状況を踏まえ、政府は新年度予算案内の収益力強化対策として75億円を計上した。酪農家・畜産農家の牛舎環境の改善や、搾乳ロボット導入費用に充てられる予定だ。また、酪農家の生産意欲を高めるために、日本の酪農の中心となっている北海道の「ホクレン農業協同組合連合会」は、新年度の道内産乳価を1キロ当たり平均3円60銭引き上げることで乳業メーカー各社と合意した。冒頭の森永乳業、明治の値上げ発表はこちらを受けてのものだと思われる。
消費者には厳しい値上げだが、酪農家にとっても、このまま乳価が上がらなければ、離農者が増え、生産量は落ち込む一方になってしまう危機的な状況だ。乳業メーカー側も、長期的な国内生乳生産量の回復を考え、道内産乳価の引き上げと、牛乳や乳製品の値上げに踏み切った形だと言える。
離農者の増加原因は、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉による先行き不安も影響している。離農者を減らし、国内酪農家の収入と展望を安定させる長期的な対応をとらなければ、抜本的な解決は難しそうだ。消費者としても、厳しい値上げの裏にある日本の酪農の危機について考えなくてはならないだろう。(編集担当:久保田雄城)