安倍政権にとって時代が求める憲法は「積極的平和外交」「我が国を取り巻く安全保障環境の変化」「切れ目ない安全保障」のすべてに対応できる「国防軍」を備えた、憲法9条(戦争の放棄)の下で制約されている枠組みを取り払う、いわば憲法9条を破棄する「異質の安全保障」になるのではないか。
「時代が求める憲法」。安倍政権の下、さきの総選挙で自民党が「この道しかない」としてアベノミクスの是非を前面に戦った選挙公約(2014)の文言が冒頭の憲法改正への姿勢だ。
安倍政権にとって時代が求める憲法は「積極的平和外交」「我が国を取り巻く安全保障環境の変化」「切れ目ない安全保障」のすべてに対応できる「国防軍」を備えた、憲法9条(戦争の放棄)の下で制約されている枠組みを取り払う、いわば憲法9条を破棄する「異質の安全保障」になるのではないか。その危惧がぬぐえない。
現行憲法下では政府が昨年7月に閣議決定した集団的自衛権の行使容認という憲法解釈の変更の下でも中東・ホルムズ海峡での戦時の機雷掃海は違憲にあたると思われる。米軍と一体にこうした活動を行うことは難しいだろう。
総理は憲法改正で『国防軍』を創設し、米軍とより緊密に一体的に活動することで日本の安全を担保する考えなのだろう。一国のみで国の安全を守ることができる時代ではなくなったとの見方が正しいとしても、必要以上に一体化すれば他国の戦争に巻き込まれる危険度を高めることにもなる。
安倍総理は自民党の船田元・憲法改正推進本部長が来年夏の参議院選挙後に憲法改正の発議をめざすとしたことに「常識だろう」と同調したそうだ。国民の支持を得られやすい案件から改正の発議をしていくことになるのだろうが、参議院での発議も可能にするため、来夏の参院選で議席3分の2を目指した動きが活発になろう。
自民党は平成17年の新綱領で「近い将来、自立した国民意識のもとで新しい憲法が制定されるよう、国民合意の形成に努める」と新憲法制定を新綱領の筆頭に掲げた。
平成22年の綱領では、党政策の基本的考えの筆頭に「日本らしい日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法の制定を目指す」とし、「一国平和主義的観念論を排す」とした。憲法9条を守る護憲運動や憲法9条の規定の立ち位置が現実にそぐわないと言いたげだが、安倍政権では9条の下にあっても防衛費拡充路線が続き、統一地方選後の安保法制見直しで集団的自衛権行使容認での『危険』に対する解釈拡大で9条の歯止めが形骸化される懸念もある。解釈変更から次は改憲へ。日本の安全保障の在り方と憲法について、国民議論に高めることが求められている。(編集担当:森高龍二)