名物社長の挑戦に学ぶ、自然を利用する「省エネ」

2015年02月11日 19:46

 経済産業省の資源エネルギー庁では毎年、暖房の使用などによりエネルギーの消費が増える2月を「省エネ月間」として、国や地方公共団体はもちろん、事業者及び一般国民が一体となった省エネ生活の推進を図っている。

 省エネ月間が制定されたのは、今から38年前。1977年(昭和52年)に「資源とエネルギーを大切にする運動本部」によって作られた。目的はもちろん、国民の省エネ意識の向上と定着だ。経済産業省をはじめ各自治体では、この時期になると広報誌やWEBサイト、各施設のポスターなどで省エネを呼びかけているほか、一般企業でもこの活動に賛同し、独自の啓発活動を行っているところは多い。

 例えば、東京ガス?9531?では、これまでにも同社の企業館「がすてなーに ガスの科学館」、「環境エネルギー館」、「ガスミュージアム」などでの特別イベントを開催したり、省エネ生活に楽しく取り組むための親子向けの工作やワークショップなどを行ってきた。また、大手電機メーカーのNEC?6701?でも、グループ社員の環境意識の底上げと、一人ひとりの環境に関する行動の促進を図るため、省エネルギー講演会や省エネルギー施設見学会、省エネ・節電パトロールなどを実施している。

 しかし、一般的な省エネといえば、やはり家庭内での節電になるのではないだろうか。これについては昨年、住宅メーカー・アキュラホームの宮沢俊哉社長が面白い取り組みを行っている。元大工である事から、入社式には新入社員の前でカンナがけを披露することで「カンナ社長」の異名を持つなど、名物社長としても知られる。そんな宮沢社長は3年前に、社長本人の自宅を実験棟としてエコ仕様化を施し「買電ゼロ」に挑戦したことだ。社長の自宅は埼玉県さいたま市。都会にあり、真夏はヒートアイランド現象を起こすような過酷な場所。そんな場所で、猛暑真っ只中の8月に太陽光発電と蓄電による最低限の電力で、なんと21日間に及ぶ買電ゼロ生活を達成したというから驚きだ。

 しかも、特筆すべきは最新設備を過剰に使った節電や創電による結果ではなく、すだれなどで陽射しを遮ったり、屋内の通送風環境を改善するなど、自然の涼風を取り入れること、さらには着衣などの工夫も取り入れることで、実際温度と体感温度、さらには心感温度まで下げることに成功している点だ。実体験に基づくこの貴重なデータは、同社の家づくりに役立てられるとともに、顧客への省エネ提案としても活用されている。

 近年、電化製品の省エネ性能も年々向上し続けている。また省エネや創エネに関する住宅設備の性能も目覚ましい発展を遂げている。しかし、便利な設備にばかり頼るのではなく、少しの工夫や心がけ次第で、かなりの省エネが実践できるはずだ。自然を利用し、自然と共に暮らすことが、自然を守り、人間自らを守ることにつながるということを、この省エネ月間に改めて考えたいものだ。(編集担当:藤原伊織)