原発依存度低減へ実効性あげる方策 電源表記も

2015年01月17日 09:53

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「原発依存度を可能な限り低減させる」。自民党がさきの総選挙に掲げた公約。「徹底した省エネと再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化」で実現していくとしている。

 「原発依存度を可能な限り低減させる」。自民党がさきの総選挙に掲げた公約。「徹底した省エネと再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化」で実現していくとしている。

 そのためには再生可能エネルギーの買い取り量の拡大が少なくとも数年ごとに増加する数値目標の設定を図り、目標達成のために電力業界がどう取り組むかを業界に義務付け、プランの作成とともに、毎年、達成度を公表し、国会に報告していくなどの取り組みが必要だ。

 再生可能エネルギーの買い取り量の計算土台をみると、経済産業省新エネルギー小委員会では原発設備の稼働率を7割から8割と高水準で計算し、原発優先の電力需給バランスを設定している。

 つまり原発を地熱や水力発電などと同じ扱いとし「震災前の過去30年間の設備平均利用率を用いて評価」。一方で、火力発電は「再生可能エネルギーの特措法ルールを前提に、安定供給上必要な下限値まで抑制、または停止しながら可能な限り経済的運用を行う」とした。

 「原発依存を可能な限り低減させる」としながら、既存原発の過去30年間の平均利用率を電力需給バランスの枠組みに組み入れるという方策は明らかに矛盾していると言わざるをえない。こうした批判に、政府も自民党も「原発を重要なベースロード電源と位置付けている」と主張するのだろう。少なくとも数年に一度は原発設備の稼働率を引き下げ、再生可能エネルギーの買い取り量を増やしていくことが必要だろう。

 また原発は運転期間が原則40年に制限された。最長20年の延期は可能になっているが、特別点検の実施を規制委員会に申請し、点検実施が必要なことなどから、廃炉への手続きが進むことも期待はされる。

 原発の老朽化による廃炉、いわば「消極的電力供給源の減少」による、再生可能エネルギー買い取り枠の拡大になっていくことも予想されるが、成り行き任せの原発依存逓減策といえよう。

 実際、老朽化した原発5基について、電力各社が年度内に廃炉の決定を下すとの情報はある。運転開始から来年7月までに40年を超えることになる原発で、関西電力の美浜1号機、2号機、中国電力の島根1号機、九州電力の玄海1号機、日本原子力発電の敦賀1号機がその対象。

 政府は電力各社が原発廃炉の判断をしやすいよう、廃炉費用の負担を電力小売りの全面自由化後も、何らかの形で料金に転嫁し、電気利用者の負担でカバーできるようにする方針だ。

 原発に依存しない社会の実現には省エネ努力とともに、電力コストにみあった利用者側の負担も当然発生してくる。これには利用者側も理解するはずだ。ただ、そのためにはコストを抑える努力とコストの透明性を一段と高めることが必要。

 また、原発に頼ってきた地域経済を原発に頼らない経済体質にする改革が必要になる。政府は原発廃炉となる地元支援のため、2015年度予算案で23億円を計上した。雇用を守り、新たな収入を得る仕事をいかに創出できるか、原発廃炉をスムーズに進めていくためのポイントになる。転職をサポートすることも必要だろう。

 原発依存度を低減するうえで、あわせて必要なことは、電力源が再生可能エネルギーなのか、火力発電なのか、水力発電なのか、地熱発電なのか、原発なの、一般利用者に分かるように明記することだ。これは原発依存度低減を推進するうえで重要なことといえる。電力会社にとって不利なことになるだろうが、是非、公表を法定し、義務化してほしい。

 また原発再稼働が通常国会で議論になるはずだが、そこでは、こうした議論もテーマにあげ、原発依存度低減への道筋を確かなものにして頂きたいと期待する。(編集担当:森高龍二)