■中期経営計画最終年度の2015年は視界良好
2月12日、ヤマハ発動機<7272>が2014年12月期本決算を発表した。
2014年12月期決算は、売上高が1兆5212億円で前年比7.9%増、営業利益が872億円で同58.2%増、経常利益が973億円で同61.9%増、当期純利益が685億円で同55.4%増と当初計画を上回る大幅増益決算で、年間配当は40円で前期比で14円の増配だった。
同時発表の2015年12月期の決算見通しは、売上高が11.8%増の1兆7000億円、営業利益が37.5%増の1200億円、経常利益が26.4%増の1230億円、当期純利益が11.0%増の760億円。2ケタ増収増益の強気の業績見通しで、営業利益1200億円は市場予測の1158億円(QUICKコンセンサス)を上回っている。年間配当見通しは4円増配して44円としている。2015年度は中期経営計画(2013~2015年の3カ年)の最終年度だが、利益が過去最高益だった2006~2007年頃の水準に迫る見通しで、営業利益はすでに目標の800億円を上回って計画を前倒し達成した。次のステップ、2016年度からの新・中期経営計画の策定に向け、視界は良好である。
■商品戦略の成功とコストダウンが大きく寄与
ヤマハ発動機は、たとえば主力の二輪車部門は世界全体で580万台を出荷するが国内では12.3万台(2014年度)と売上の海外比率が非常に高く「好業績は円安メリットのおかげ」と単純に考えられがちだが、実際は為替差益より、商品戦略の成功とコストダウンの徹底が全事業セグメントでの増収増益を果たした原動力だった。為替については、ドルやユーロなど先進国の通貨高によるメリットがインドネシア・ルピアやブラジル・レアルなど新興国の通貨安デメリットで相殺され、全体的な影響は大きくはなかったという。
その商品戦略とは「個性ある新商品」の市場投入が中心。中期経営計画で目指している「250モデルの新商品」は2015年には100%投入できる見込み。ブランドを強化するとともに、商品ラインナップのすき間を埋めてチャンスを取り逃さない。また、モノづくりを根本から変えた「グローバルモデル」「プラットフォームモデル」を投入して、新商品の市場投入と製品自体のコストダウンを同時に実現している。
世界全体で個性ある新商品を市場に投入し、商品ラインナップの拡充を図ったことで販売台数が増加。高価格帯の商品もほぼ順調に売れたことで増収が実現。その増収効果に加えて製品自体のコストダウンと、国内の生産体制を6工場、13ユニットの最終段階まで絞り込むなどリーマンショック後の構造改革による製造・物流のコストダウンがあいまって開発費の増加をカバーし、増益を実現するというメカニズムだった。
二輪車事業は、日本国内も含めた先進国では販売が13%増加し、新興国はASEANで9%減った販売をインドの23%増がカバーした。マリン事業は主力の北米市場の需要回復の追い風を受けた他、「船外機シフト」による大型エンジンの販売増が効いた。特機事業はROV(レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル)の新商品投入が効果をあげ、産業用機械・ロボット事業は日立ハイテクグループからの資産・事業譲受と設備投資需要の増加でサーフェスマウンターを中心に売上も利益も大きく拡大。その他事業は電動アシスト自転車の販売拡大、電動スクーターの市場投入、自動車用エンジンの販売増などがあいまって増収増益を確保できた。
■リーマンショック前の収益を目指す
商品戦略とコストダウンの徹底で増収増益を目指すというヤマハ発動機の路線は、2015年度も変わらない。二輪車事業では商品ラインナップを拡大して高価格帯商品に注力する方針を継続。営業赤字が続いた先進国市場も2007年度以来の黒字化を達成できるメドがついている。2013年度の不振から立ち直って好調なインド市場では地方市場を攻略し、現在4%の市場シェアを10%に伸ばすのが目標である。
マリン事業、特機事業も同様に商品ラインナップを拡大して高価格帯商品に注力。各事業ともコストダウンを引き続き推し進め、2014年度は4.1%の二輪車事業全体の営業利益率を5%に、17.6%のマリン事業の営業利益率はブランド力を活かした高収益のビジネスモデルを確立して20%に乗せるという目標を掲げている。
2015年度の想定為替レートはドル円が115円、ユーロ円が130円。財務面では自己資本5000億円超、1株当たり利益(EPS)200円超、ROE(自己資本利益率)15%超を達成できる見込みで、「3つの成長戦略」「ヤマハらしいモノ創り」「基盤改革」を掲げた中期経営計画は最終年度、リーマンショック前の2007年12月期の収益レベル、財務レベルを完全に回復し、成功のうちに締めくくることを目指している。(編集担当:寺尾淳)