大型モデルが好調のヤマハが送り込んだ次世代クロスオーバーバイク

2015年02月11日 20:48

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写真のマットシルバー1(マットシルバー)の他、ディープレッドメタリックK(レッド)、マットグレーメタリック3(マットグレー)を用意。

近年、大型二輪車の市場が活況を呈している。その牽引役ともいえるのが、ヤマハ発動機<7272>だ。同社の2014年度の小型二輪車(251cc以上)の国内販売台数は、1万2847台(前年比170.9%)と好調で、月単位で見ても、ヤマハだけが唯一、すべての月において前年比100%を上回り、中には200%を超えた月が5回もあるのだ(全国軽自動車協会連合会調べ)。

ヤマハが2014年にこれほどの急成長を遂げた理由として、斬新的なニューモデルを数多く市場に投入させた戦略が功を奏したことがあげられる。その中の一つが、昨年、発売されて話題になった「MT-09」だ。ネイキッドとスーパーモタードを融合させたスタイリングに、クロスプレーンコンセプトにもとづく850cc水冷4ストローク直列3気筒の新エンジンを搭載したプラットフォームモデルである。

その「MT-09」をベースにした「MT-09 TRACER ABS」が、2月10日より発売された。“Sport Multi Tool Bike”のコンセプトのもとに開発し、市街地走行からツーリングまで多用途で、スポーティかつ快適な走行性を備えたモデルだ。ヤマハでは2013年から進めている中期経営計画のなかで、二輪車事業での新たな取り組みとして“基本プラットフォームをベースにしたバリエーション展開の拡大”を掲げているが、この取り組みを国内モデルに初めて展開したのが、この「MT-09 TRACER ABS」になる。

ベースとなった「MT-09」との大きな違いは?

まず、滑らかな発進性・走行性をサポートするTCS(トラクションコントロールシステム)が新たに追加された。またレイヤー構造を取り入れたフロントカウルやハンドルカバー等を備え、ハンドルやシート、フロントスクリーンは好みにより高さ調整が可能となり、ツーリング時の快適性をより向上させている。燃料タンクの容量は4L増えて18Lとなり、給油回数を減らすことにも貢献。さらに視認性の高い多機能メーターパネルや、フルLEDヘッドライトなどの最新技術も取り入れられている。ベースモデルの「MT-09」でもABSモデルは別途用意されていたが、「MT-09 TRACER ABS」では標準装備となった。こういった装備によってフロントまわりの重量が増えたが、専用セッティングされた倒立フォークを採用するなど、“ハンドリングのヤマハ”らしいこだわりも忘れていない。ちなみに車両重量は20kgほど増加し、210kgとなったが、アルミフレームの採用やマスフォワードシルエットにより、このクラスのマシンとしては十分軽量の部類に入る。本体価格は97万円で、年間の国内販売計画は2000台となる。

「MT-09 TRACER ABS」は、ベースとなる「MT-09」とは違い、オフロードモデルを想起させるスタイリングであるロードモデルで、ツーリングを意識したいわゆるクロスオーバーバイクに近い。このクロスオーバーのジャンルでは他の二輪メーカーに比べると後発にあたるが、それだけに、充実した最新の装備を誇っている。何度も誕生しては一部のマニアックなライダーに支持されてきたが、今年はクロスオーバーバイクが流行るのかもしれない。(編集担当:鈴木博之)