任天堂<7974>の岩田聡社長は、毎日新聞が行ったインタビューで、今後は同社の人気キャラクターを活用したライセンス事業を新たな収益源にしていく考えを示した。条件としては「キャラクターのイメージや価値を損なわないこと」とし、「スーパーマリオブラザーズ」、「ゼルダの伝説」、「星のカービィ」など、長く愛されているゲームのキャラクターを、外部企業の広告や商品に積極的に活用していってもらう計画だ。
任天堂は、携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」や、据え置き型ゲーム機「Wii U」が伸び悩み、台頭するスマートフォン向けゲームに押される苦境から長く抜け出せていない。1月28日に発表した2014年度第3四半期決算では、316億円の営業利益を計上し、4年振りの黒字を記録したが、それも「Wii U」の在庫損処理によるもので、前向きな施策によるものとは言い難い。まだまだ見通しは苦しく、14年度(15年3月期)通期決算予想は下方修正された。
ゲーム業界全体の潮流はスマートフォン向けゲームに移りつつあり、そこに任天堂が参入していけば回復の可能性はある。しかし、任天堂は「課金による射幸心を煽るスマホゲームのやり方には疑問を感じる」との姿勢を崩しておらず、頑なにスマートフォン参入以外の事業で回復の手段を探ってきた。そこには、古くは花札から始まり、ファミコンをはじめ家庭用ゲーム機をヒットさせてきた任天堂の矜持があるのだろう。
そこで選んだのが、キャラクターライセンス事業だ。任天堂はこれまで、キャラクターの外部活用には慎重な姿勢を示してきた。しかし、キャラクター提供を行うことで、自社そのものはスマートフォンゲームに参入せずに、提携という形でそうした市場や外部企業と共存しようという思惑が見える。
すでに任天堂は、スマートフォンゲーム「パズル&ドラゴンズ」(通称:パズドラ)を大ヒットさせているガンホー・オンライン・エンターテイメント〈3765〉との提携を進めている。4月29日にはガンホーから、ニンテンドー3DS版パズドラが発売される予定だ。3DS版パズドラには、コラボレーションの形で「スーパーマリオブラザーズ」のキャラクターが登場する。ガンホーにとっても、マリオの知名度を活かしパズドラユーザーを世界に広めるチャンスだ。
あくまで家庭用ゲーム機の雄としての姿勢は守りつつ、キャラクターライセンス事業でスマートフォンゲーム市場や外部企業との共存を図る。また、一方で任天堂は健康事業にも進出するとしている。ゲームのノウハウを活かし、楽しんで続けられる健康習慣を作る端末を提供していく予定だ。復活に向け、活発化してきた任天堂の新たな動きに今後も注視したい。(編集担当:久保田雄城)