そんな状況を背景に前週は、年金の買い、日銀の買い、外国人の買いを追って個人投資家まで買い出動し、メガバンクを先頭に現物買いの実需が点火してTOPIX主導で高値追いのスイッチが入り、19日の「新高値更新」のニュースがさらに拍車をかけた。それが、市況がにわかに色気づいた「春のめざめ」のメカニズムだった。ギリシャの債務問題の懸念後退は火種の一つにすぎず、為替レートは前週と比べればむしろ円高の方向で、NYダウが下がった日も含めてTOPIXは5連騰と、外部要因は脇役になっていた。
さて、今週はその「春のめざめ」がどこまで持続できるかが焦点になる。前週で勢いにまかせてエネルギーをすでにかなり放出してしまったのか? それとも精力はまだたまっているのか? それとも春節休暇明けの中国の経済指標やイエレンFRB議長の議会証言のような外部のストレスがかかったら、萎えてしまうのか?
その手がかりは、やはりテクニカルポジションだろう。日経平均の20日終値は18332.30円で、5日移動平均線(18157円)、25日移動平均線(17658円)、75日移動平均線(17376円)、200日移動平均線(16036円)は、全て下にある。日足一目均衡表の「雲」は16647~17297円で1035円も下に離れている。ボリンジャーバンドは25日+1σ(18011円)と+2σ(18365円)の間だが、20日に+2σのすぐ近くまで上昇した。
それは、下界をはるか見下ろして超然と飛ぶ「孤高の鳥」のように見えるが、オシレーター指標は「買われすぎ」を示すものも、そうでないものもあり、混在している。
25日騰落レシオは、18日に120、19日に130を突破して20日は131.25に達して現状、買われすぎの過熱ゾーン。ストキャスティクス(9日/Fast)も96.10まで上昇し、70を超えて買われすぎの領域。RCI(順位相関指数)は+93.0%で、+50%を超えてこれも買われすぎのシグナルが点灯している。一方で25日移動平均乖離率は+3.8%で、買われすぎの目安の+5%にはまだ届いていない。RSI(相対力指数)は66.7%で、これも買われすぎの目安70~80%よりも下。サイコロジカルラインは66%で、75%オーバーの買われすぎ圏まで達していない。極めつけはMACDで、数値は225.7%だが「SIGNAL」を上に抜き「買いシグナル」が灯っている。
上値をどこまで追えるか判断に迷いそうだが、ユーロ圏財務相会合で結論は4ヵ月先送りでもギリシャの債務問題に一応の決着がついてNYダウが154ドル高、20日のCME先物清算値も18525円と高かったので、素直に23日始値は18500円超えを想定すれば事足りるだろう。しかし今週は月末のドレッシング買いが入る可能性があるものの、外部要因に24、25日のイエレン議長の議会証言待ち、25日に再開する中国本土市場、同じ日に発表される中国のHSBCのPMIなどの不安要素がある上に、18365円にボリンジャーバンドの25日線+2σ、18540円に25日移動平均乖離率+5%のラインが横たわっているので、18500円を超えての上値追いは難しく「上昇一服」の週とみる。
一方、下値ではテクニカル的に週後半、25~27日に気になる現象が来る。それは日足一目均衡表の「雲のねじれ」。今週、雲の下限は16647円から17157円まで上昇し続ける。上限は17116~17311円なので1000円以上も離れた「下界」とはいえ、過去にはねじれる雲が発する「遠雷」を聞いた後、相場のお天気がにわかに崩れたこともあった。波乱の可能性として覚えておいたほうがいい。では、下値はどこまで下がる可能性があるのか? ありそうなシナリオとしては「前週の反動で調整が入って18000円割れ」があり、データ的に調整というものはキリのいい数字を突破しないと気が済まない性格を持っているので、終値で大台を割り込むような局面は来るとみる。それでも25日移動平均線の17658円では下げすぎで、2月13日のSQ値17886円あたりまでが限界だろう。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは17900~18500円とみる。春にめざめた欲望を理性でコントロールする。大人になるとは、そういうこと。今週、棒上げもゲリラ急落も乱高下もせず、抑制がきいたおだやかな相場になったら、東京市場は信頼される大人のマーケットになったと言える。たとえばこんなふうに……。「ゆるやかな流れに沿って/かれはやはらかに過ぎていく/なにものも影響しない」(北園克衛「奇妙な肖像」)。(編集担当:寺尾淳)