デンソーがカンボジアで生産拡大

2015年03月03日 07:50

 中国に変わり、急速に生産拠点として、また急成長を続ける市場としての存在感を高めている東南アジア。その東南アジアの中でも、中心的な役割を果たしているのがタイである。自動車部品大手であるデンソー<6902>は2007年からタイに現地法人、デンソーインターナショナルアジアを設立し、自動車部品の開発や生産を行ってきたが、今回タイの隣国、カンボジアに新工場を設立すると発表した。

 ASEAN地域は世界中から自動車メーカーが進出し、生産が急拡大している。デンソーはこの需要に対応するため、タイだけでなく13年からはカンボジアにも工場を設立し、自動車部品を製造していた。これまでは工場をレンタルし、そこで生産を行っていたが、22億円あまりを投じ、プノンペン経済特区内に10万平方メートルの用地を取得、380人が働く自社工場を設立する。生産するのは二輪車用の発電機やオイルクーラーなどで、生産したものはすべてタイへの輸出用だ。

 日本企業の海外工場というと、日本人社長や日本人技術者が監督するところを想像するかもしれないが、デンソーのカンボジア工場はそうではない。工場で働くのは現地のカンボジア人だが、それを指導するのは日本人ではなくタイ人だ。日本人が常駐するのに比べて人件費が節約できるだけでなく、日本人のいない工場で大きな権限を与えられたタイ人の士気も上がるという効果もある。

 タイで大きな成功を収めた企業が、そこを拠点として、ミャンマーやラオス、カンボジアなどの周辺国に拡大していく戦略が、タイプラスワンと呼ばれ注目を集めている。これは人件費や土地などが高騰するタイから工場などを移転することで、コストを抑えるとともに地域リスクを分散し、安定した生産を目指す方式のことだ。安定した生産力も、コストダウンも非常に重要なことはもちろんだが、クオリティを維持できなければ、エアバッグの世界的なリコールを起こしたタカタ<7312>の二の舞になってしまう。デンソーの手腕が、問われているといえよう。(編集担当:久保田雄城)