富士通は3日、スマートフォンの画面を見るだけで、一瞬でユーザーの目の虹彩が読み取られ、ロック解除が可能となる虹彩認証システムを開発し、その技術を搭載したスマートフォンを試作したと発表した。
従来スマートフォンで画面ロックなどを解除する際には、パスワード入力や、指紋センサーでの指紋認証などが主流だった。この技術によって、より偽造がしづらい虹彩認証で簡便に認証でき、画面を見るだけでロック解除ができるため、手袋をはめていて指先が使えない時など、手を使う煩わしさがなく、使いやすさが飛躍的に向上する。また、スマートフォンのロック解除だけでなく、Webサービスのログイン時にも、IDやパスワードを入力することなく、虹彩認証だけで簡単・安心にアクセスできる。
虹彩認証とは生体認証方式の一つであり、瞳孔の外側にある虹彩と呼ばれる環状の部分の、皺のパターンを認識し本人確認を行う技術。富士通は、従来からある虹彩認証機能をスマートフォン用に小型・最適化することに成功した。虹彩は2歳頃から殆ど変化することなく、さらに外傷を受けにくく、偽造も困難といった特長がある。
人の眼球は、虹彩の中の平滑筋の働きにより、穴を大きくしたり小さくしたりして、網膜に入る光の量を調節する。虹彩の持つ皺のパターンを、指紋のように各人固有の識別情報としてとらえるのが虹彩認証技術である。虹彩を読み取る方法は、赤外線LED照明で赤外線を照射し、赤外線カメラで眼球部分を撮影することにより、虹彩パターンを取得し、登録・照合する。新しく開発した虹彩認証システムでは、高精度の認証を実現し、より利便性を高めたスマートデバイスへの活用が可能となるという。
既存の虹彩認証システムを構成する部品では、サイズや性能がスマートフォン搭載への障壁になっていた。富士通は虹彩認証向けに、専用の高出力な小型赤外線LED照明および専用の赤外線カメラを開発し、また生体認証技術やカメラ制御技術を活用することで、日常生活における様々な場所でも、微細な虹彩パターンを確実に認証するシステムを実現した。さらに、虹彩認証エンジンであるDelta ID社の「ActiveIRIS」を採用した。これにより、今までの虹彩認証システムでは、目と赤外線カメラの位置を10cm程度まで近づける必要があったが、通常のスマートフォン使用時の目とカメラの距離でも認証が可能でとなった。光生物学的安全性試験(IEC 62471)を実施することで、赤外線LED使用時の目の安全性も十分に検証しているという。
今回試作機に搭載した虹彩認証技術は、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスはもちろん、富士通のセキュリティソリューションへの適用を視野に入れた幅広い応用が可能だという。今後富士通では、虹彩認証技術とその多様化について研究開発を進め、2015年度中に製品化することを目指す。 (編集担当:慶尾六郎)