積水ハウス 好決算で3期連続過去最高増収増益更新見込み発表

2015年03月07日 20:37

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積水ハウスは高付加価値戦略も奏功し、2期連続で過去最高の売上高、利益を更新した。

 積水ハウス<1928>は3月5日、増収増益だった前期、2015年1月期の本決算を発表した。

 売上高は6.0%増の1兆9127億円、営業利益は11.1%増の1465億円、経常利益は13.5%増の1564億円、当期純利益は13.1%増の902億円。いずれも通期見通しを上回っており、2期連続で過去最高の売上高、利益を更新。年間配当は前々期から7円増配して50円とした。

 各セグメント別に前期比の増減を見ると、「請負型ビジネス」では本来の主力の戸建住宅事業は消費増税後の反動の影響で売上高17.5%減、営業利益25.7%減。それでも商品の「高付加価値化」を推進し、鉄骨2階建住宅の構法統一化、ブランドの再編、高級住宅「イズ・シリーズ」での新フラッグシップモデルの市場投入、高断熱、省エネ型住宅に太陽電池、燃料電池などの創エネ設備を装備したゼロエネルギー住宅「グリーン・ファースト・ゼロ」など、需要の本格回復期を見通した戦略を着々と進めている。

 また、売上高、営業利益とも戸建住宅事業とは僅差に迫る賃貸住宅事業は、売上高は11.9%増、営業利益は25.6%増だった。追い風になったのは2015年1月の相続増税。所有地に建物を建てると土地の評価額が下がるので節税目的の住宅建設が増えた。居住目的に合わせた柔軟な提案ができる高品質3・4階建て「シャーメゾン」のような高価格帯商品の比率が高まり、前期の1棟単価は6854万円と前々期比で12%も上昇している。高付加価値化がキーワードで、サービス付き高齢者向け住宅も積極的に展開している。

 「ストック型ビジネス」の不動産フィー事業、リフォーム事業は増収増益で、高付加価値化で入居率が向上した不動産フィー事業の増益幅は16.7%と大きかった。「開発型ビジネス」の分譲住宅事業、ブランド価値が高まったマンション事業は減収増益で、国際事業は減収減益。新規上場させた「積水ハウスリート」への物件売却で出口戦略を強化した都市再開発事業は4.2倍の増収、3.0倍の増益と大きく伸びた。

 2016年1月期も引き続き3期連続過去最高を更新する見通し

 2016年1月期の通期業績見通しは、売上高は0.9%増の1兆9300億円、営業利益は4.4%増の1530億円、経常利益は1.6%増の1590億円、当期純利益は3.1%増の930億円を見込む。小幅増ながら3期連続で過去最高の売上高、利益を更新する見通し。1株当たり当期純利益(EPS)は132.96円。年間配当は50円からさらに4円増配して54円に、配当性向も38.2%から40.6%に伸びる見通し。本決算と同時に3月5日、発行済株式数の1.86%にあたる最大1300万株、約200億円の自社株買い計画も発表し、増配とともに利益の株主還元には積極的になっている。

 相続税節税を目的とする賃貸住宅の建設は引き続き高水準の需要が予想される。都心部の3・4階建て賃貸マンションなど賃貸住宅事業の受注は前期から好調で、今期の売上高見込みは4.9%増。高価格帯へのシフトで1棟当たりの単価が高まる傾向は今期も続き、営業利益は6.9%の増益を見込んでいる。

 賃貸住宅の管理戸数が増えれば管理収入も増えるという相乗効果も期待でき、不動産フィー事業の売上高は4.6%増、営業利益は13.2%増を見込む。マンション事業は48.2%増収、58.3%増益と大きく伸び、国際事業は中国で物件引き渡しが進むなど、37.8%の増収、81.0%の増益を見込んでいる。

 戸建て住宅事業は4.0%の減収、8.0%の営業減益を見込んでいるが、受注高は7.6%増と回復をみせる見通し。この点について阿部俊則社長は「2014年秋から受注は回復基調にある。今後、実質賃金が増加していけばさらに良くなる」と、明るい見通しを述べている。「住宅取得資金贈与の非課税枠拡大」「住宅ローン『フラット35』の金利優遇幅拡大」のような政策によるテコ入れも期待できる。

 利益面では増収効果とともに、ロボットを導入するなど生産効率改善によるコストダウン効果が出ることも見込んで増益見通し。原価率の低減で、売上総利益を売上高で割った粗利率は前々期が19.9%、前期が19.3%と0.6ポイント下がったが、今期は19.8%と前々期並み水準を見込んでいる。

 住宅業界では、需要低迷期には各社が受注競争に走って工事採算が悪化する傾向がみられ、昨今は輸入部材を中心とする資材費のコスト高、建設技術者の人手不足による人件費のコスト高という悪条件が重なっている。しかし積水ハウスは「住」に特化し、「SLOW & SMART」をブランドビジョンに掲げ全事業部門で「高付加価値化」を推進。さらに現場で適正な工事採算を維持し、全社的なコストダウンの努力で収益力を高めている。

 また、「請負型」「ストック型」「開発型」ビジネスがのバランスのとれた事業構成に移行しつつあり、今期計画の3期連続過去最高の売上高、利益の達成が射程圏内にあることを感じさせる決算となった。(編集担当:寺尾淳)