人手不足が深刻化するなか、2014年12月の有効求人倍率は1.15倍と、1992 年3月以来22年9 カ月ぶりの高水準となった。また、新規学卒者の就職内定率は2014年 2月時点で 80.3%(大卒)と4年連続で上昇し、リーマン・ショック前の 2008 年の水準に迫っている。しかし一方で、地域間や業界間、社員・非正社員間などの雇用動向には依然として格差がみられる。
帝国データバンクは、2015年度の雇用動向に関する企業の意識について調査を実施した。その結果、正社員の採用予定があると回答した企業は 63.6%にのぼり、リーマン・ショック前の2008年度以来7年ぶりに6割を超えた。
2015年度(2015年4月~2016年3月入社)の正社員(新卒・中途入社)の採用状況について尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と回答した企業は 63.6%にのぼった。リーマン・ショック前の 2008 年度(62.2%)以来7年ぶりに、採用予定のある企業が6割を超えた。2014年度(2014 年2月調査)の59.5%と比べると4.1 ポイント増となっており、5年連続で改善した。他方、「採用予定はない」は27.2%で8年ぶりの 2 割台にとどまったとしている。
次に、2015年度(2015年4月~2016年3月入社)の非正社員(新卒・中途入社)の採用状況について尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と回答した企業は50.2%にのぼった。戦後最長の景気拡大期にあった2007年度(57.6%)以来8年ぶりに5割を上回った。企業では、リーマン・ショック後に非正社員を削減し、既存の正社員の雇用確保を優先する傾向がみられたが、専門知識やスキルの高い社員の不足が続くなかで、非正社員の雇用を積極的に捉えている様子がうかがえるという。
また、自社の属する地域・業界の雇用環境が改善する時期はいつ頃になるか尋ねたところ、「2014年度内(すでに回復している)」と考える企業は10.1%となった。前回調査(2014年2月)の2.2%と比べて、現状の雇用環境を肯定的に捉えている様子がうかがえる。
日本経済団体連合会が就職活動時期を後ろ倒しすることを決め、会社説明会はこれまでより3カ月、選考活動は4カ月遅らせることになった。そこで、このような就職活動時期の後ろ倒しにより、自社の採用活動にどのような影響があるか尋ねたところ、「影響はない」と回答した企業が半数で最も多かった。他方、「不利になる」という回答は11.1%であった。企業の1割が就職活動の後ろ倒しにより、自社の採用活動への影響を懸念している様子がうかがえる。特に「不利になる」と考える企業は「大企業」で高くなっており、従業員が301~1,000人の企業では全体を10 ポイント以上上回った。
そして、現在、自社では主にどのような人材の活用に最も注力しているか尋ねたところ、「若者」と回答した企業が34.1%で最多となった。さらに、「特定層に限定しない」(18.6%)、中途採用や子育て後の復職などさまざまなルートで採用・登用されている「多様な人材」(16.7%)、「女性」(15.1%)が続いた。企業が注力する人材として「若者」と「女性」で半数近くに達しているほか、多様な経験を有する人材も重視していることが明らかとなった。なかでも、従業員1,000人超の企業では3社に1社が「女性」の活躍推進に注力しており、突出して高いという。
このように、2015年度の雇用動向は、人手不足による業績への懸念が一段と高まるなかで、正社員、非正社員ともに大きく改善するとみられる。特に、大企業や従業員数の多い企業での採用意欲が高く、正社員の採用予定は8割を超えている。これまでの大幅な落ち込みを経て、採用に前向きな企業は全国的な広がりをみせている。(編集担当:慶尾六郎)