外国軍隊への自衛隊による後方支援拡大は「国会の事前承認を基本とする」としているものの、『周辺事態』の概念を外し、地球規模で海外活動を可能にする、米軍と一体化の危険をはらむものになりそう。
岩盤規制に挑む安倍政権にとって、安保法制見直しは「憲法9条(戦争の放棄)」という「自衛隊活動の岩盤規制」を崩す「最も危険な規制緩和」になる可能性がある。
安倍総理は総理ポスト復活直後に渡米し、オバマ大統領と会談した。その際、集団的自衛権について見直す用意があると自ら語った。その瞬間から、今日の事態に向けた歩みが続いてきた。
そして、憲法改正を経ないまま、昨年7月、閣議で憲法解釈変更という「実質改憲」を図り、歴代政府が憲法9条の下で堅持してきた自衛隊の海外派遣の厳格な枠組み、後方支援を行う場合の戦闘行為との一体化を避ける枠組みを見事に崩壊させ、海外での米軍支援活動に「弾薬提供」や「離陸直前の戦闘機への給油活動」にも法的担保を与えようとしている。
並行して、日米防衛協力のための指針、日米ガイドラインの見直しでは「防衛省の中央指揮所に米軍幹部が常駐する方向で調整中」とマスコミが報じた。中央指揮所は「事実上の自衛隊の最高司令部にあたる」そうだが、自衛隊の最高司令部に米軍幹部が常駐することを日米当事者以外の国家リーダーはどう判断するのだろう。
安倍総理は有事に備えた連携強化、日本の抑止力を高めることになると強調するのかもしれない。あらゆるところに米国の意向が反映することになるのではないか。「日米連携強化」と専守防衛の憲法の下での自衛隊が「米軍とともにある自衛隊」になってはならない。防衛省中央指揮所に米軍幹部が常駐する方向での日米ガイドライン見直し協議の意味や説明が国会等の場であったようにも思えない。
後方支援での自衛隊の海外派遣は事案発生に伴う特措法(時限法)に基づく活動から、恒久法制定によりハードルが引き下げられる。恒久法が成立すれば、これを根拠に後方支援活動訓練が自衛隊と米軍一体で恒常的に実施されることになりそうだ。
恒久法に基づく日米合同訓練により自衛隊員の安全を高めることができるというが、米軍の敵国からは自衛隊の後方支援が米軍の戦闘行為と一体と受け取られる危険を高めるなかで、隊員の安全のために訓練するという理屈はどうなのか。危険でも踏み込んで米軍支援を拡大せざるを得ない状況に日本政府が追い込まれているということなら、それはそれで国会等で明らかにし、詳しく説明すべきだろう。
与党協議での合意により、今後、落とし込まれる法案の「条文」のひとつひとつを厳格にチェックし、憲法に照らし、国民が理解・納得できるよう、政府・与党には説明する責任がある。もちろん、国会で時間をかけ熟議することはいうまでもないが、安全保障や憲法にかかわる案件だけに、日本の進むべき道を誤らないためにも、野党が提起する問題に真摯に答え、数の力で押し切るのではなく、法案修正にも応じる姿勢こそが政府・与党に求められている。(編集担当:森高龍二)