生活習慣病予防やメタボ対策などで、日本の伝統的な食材が見直されてきている。大豆もその一つである。大豆は日本人の食生活には欠かせない伝統的な食品素材だ。豆腐はほとんどの人に好まれる食品であり、味噌・醤油は和食の味には不可欠な調味料である。また大豆には、健康に寄与することが認められている多くの成分が含まれている。これは世界的に見て、今後不足が予想される食品たんぱく質の良質な資源としても重要な食品素材と考えられるという。
国立大学法人京都大学と油脂、製菓・製パン素材、大豆たん白事業を展開している不二製油は17日、 4 月1日より2018年3月31日までの3年間、産学共同講座”「不二製油」大豆ルネサンス講座”を創設すると発表した。
不二製油では長年にわたり大豆に注目し、新しい加工技術の導入により、分離大豆たんぱく質やその分解物であるペプチドの生産を行い、食品の物性改良や健康維持に役立つ大豆食品を開発してきた。その背景には、現在起こっている地球規模での急激な人口増加と環境変化に対し、大豆は特にたんぱく質の栄養源として貴重な食料資源であると考えられることにある。
しかし、世界的に見た場合、大豆の大半は油脂の原料としてのみ利用されており、大豆そのものや、搾油した残りの部分を食品素材として利用することは、ほとんどなされていないのが現状だという。それは、伝統的に大豆が油糧種子であると考えられて来たことに加え、多くの人にとって、大豆を原料とした食品の風味や物性が嗜好に合わないことに起因する。
そこで不二製油と京都大学は、大豆研究の深堀を進め、大豆に対する技術革新を行うことを目的とした共同講座を設立した。この講座では、「大豆の原点」に立ち戻り、大豆に関する研究の深堀を行うことにより、新しい加工方法、健康に良い成分の強化法などを開発し、「大豆ルネサンス」と呼ぶ革新的技術の確立を目指すという。
不二製油が蓄積した大豆および大豆食品研究の知見を利用・発展させる一方、学術的に先端レベルの検討を行うため、京都大学大学院農学研究科の「品質評価学分野」(松村康生教授)および「食品分子機能学分野」(河田照雄教授)の2講座との共同研究体制を取り、風味/物性/栄養機能の両面からの技術開発を目指す。さらに、産官学連携の重要なポイントである“得られた知見の迅速な実用化”を行うとしている。(編集担当:慶尾六郎)