日産、電気トラック「e-NT400テストトラック」の実証実験を千代田区「ちよくる」で開始する

2015年03月23日 07:25

e-NT400

小型トラック「アトラス」をベースに電気自動車(EV)システムを搭載したZEV(ゼロエミッション車)小型トラックである日産「e-NT400テストトラック」。80kWの電動モーターと高出力&大容量のリチウムイオンバッテリーにより、JC08モードで航続可能距離が約62km。30分間で容量の80%まで充電可能な急速充電機能を内蔵する

 アメリカ・カリフォルニア州などでは自動車メーカーに対して販売台数の一定割合を排ガスの出ないクルマとするZEV(Zero Emission Vehicle/ゼロエミッション・ヴィークル)規制を実施。各メーカーはこれに対応しなければならない。州内で一定以上の台数を販売する自動車メーカーに対して、決められた台数ベース比率の「ZEV」を販売することを義務付けている。

 ZEVとは排気ガスを出さないで走行するクルマの総称。IT企業が集中している州北部のシリコンバレー周辺では、企業のエコ意識が高くからハイブリッド車(HV)などが普及していた。だが、今後は一切排気ガスを排出しない燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)を一定以上販売する必要がある。ZEV規制をクリア出来なければ、州政府に罰金を納めるか、他社からZEVクレジット(排出権)を購入する必要に迫られる。そうなるとメーカーの先進イメージに傷が付くことから北米市場を狙う自動車メーカー各社は規制対策を急いでいる。

 日産自動車はこうしたZEV規制に対応するために「日産リーフ」をはじめとする乗用の電気自動車(EV)で対応する構えだ。乗用車のEVに加え、小型商用バン「NV200 バネット」をベースとした電気自動車「e-NV200」の販売を昨年10月から開始した。日産は、EVの開発を行なうだけにとどまらず、EVを普及させ持続可能なモビリティ社会を構築するために包括的な施策を実施している。

 その取り組みは、リチウムイオンバッテリーの生産やリサイクル、そしてその2次利用から充電インフラの整備、加えて内製急速充電器の開発にいたるまで多岐にわたる。さらに、ルノー日産アライアンスとして、世界各国の政府や自治体、企業などと、既に100件を超えるゼロエミッションモビリティに関するパートナーシップを締結している。

 今回、日産自動車は100%電気トラック「e-NT400テストトラック」の実証実験運行を、東京・千代田区のコミュニティサイクル事業実証実験「ちよくる」で開始すると発表した。ミュニティサイクル事業実証実験「ちよくる」とは、株式会社NTTドコモと東京・千代田区が、2014年10月から実施している千代田区のコミュニティサイクル事業実証実験だ。

 NTTドコモと千代田区は、同「ちよくる」プログラムにおいて、日産が貸与する「e-NT400テストトラック」モニター車を、千代田区内全域に配置されている約30カ所のサイクルポート(自転車の貸出・返却拠点)間での次世代コミュニティサイクルシステムを搭載した自転車の再配置運営に2カ月間活用する。

 今回、100%電気で走行する「e-NT400テストトラック」を使用することで、千代田区のサイクルシェアリング事業全体における、さらなるCO2削減効果が期待できる。日産は今回の実証運行で得られたデータをもとに、走行性能や充電の運用などに関する検証を進め、今後の開発に生かす。

 電気トラック「e-NT400テストトラック」は、小型トラック「アトラス」をベースに、「日産リーフ」のコンポーネント(モーター&バッテリーなど)を最大活用した電気自動車(EV)システムを搭載しており、画期的な“ゼロエミッション小型トラック”として将来量産化を目指しているトラックだ。排気ガスを一切出さない“ZEV”であることから、都心部の内燃機関エンジン車乗り入れ制限のあるエリアにも入っていける。同時に、通常の内燃機関エンジン車に比べて圧倒的に低騒音でもある。つまり、深夜の時間帯でも運行・運用しやすい利便性の高いトラックだ。

 さらには、80kWの電動モーターと高出力・大容量のリチウムイオンバッテリーにより、振動が少なく大トルクによるスムーズな加速と乗り心地を実現。運用するドライバーにも優しいトラックとして新しい運転感覚を提供するトラックである。今回のモニター車はJC08モードでの航続可能距離が約62kmで千代田区内の運行には何ら問題ない。さらに、30分間で容量の80%まで充電可能な急速充電機能を内蔵している。(編集担当:吉田恒)