2014年10月末、警視庁は生活道路などで速度取締りを行うことができる、新型オービスの導入を発表した。従来のオービスは、高速道路やバイパスなど、大きい道路にばかり設置されていた。カメラ付きの速度取締機であり、法定速度以上のスピードで走行していると正面からフラッシュと共に撮影される仕組みである。撮影されたドライバーは、後日警察署から呼び出しを受けるわけだ。
幹線道路のみに設置されていたオービスだが、新型は海外で開発されたもので、住宅街などの狭い道路にも設置される予定だという。実は、狭い住宅街にある道路こそ自転車と車、歩行者が混雑しており、交通事故が絶えない。2013年には約63,000人の歩行者や自転車利用者が死傷している。これは約9分に1人が事故に遭っている計算だ。
新型のオービスは、従来のものよりもかなり小型化されており、設置場所が拡大したということであろう。この特性を活かし、これまで取締りが難しかった二輪車についても強化されると言われている。しかし、実は走行速度が上がることによって事故発生率が上がるというデータはないのだ。これまでに数多くの交通事故裁判を扱ってきた弁護士は、「スピードの出し過ぎがどれだけ危険なのかをしっかり調べたうえで新型オービスを導入するならまだしも、明確な意図が見えてこない」と話す。
全国の都道府県では11年から13年にかけて一般道路の速度規制見直しを行った。1911の区間で交通事故の増減率を分析したが、速度規制の引き上げ引き下げに関わらず、事故が減少したか横ばいだった地区が7割となったのだ。このような取り組みの一方で、速度違反の取締り件数は確実に減ってきている。ピークは85年の654万7393年であったのに対し、14年には約183万5930件となっており、実に約67%もの減少になっているのである。
こうしたデータが出ているにも関わらず、どうして新型オービスを導入する必要があるのだろうか?取締り件数の減少で警察の収入が減少しているためではないか、といった声もある。
取締り件数や罰金がノルマになっていないことはよく言われるが、一般市民としてはつい疑ってしまいたくなる制度ではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)