安倍晋三総理が日本の総理として初めて米国上下両院合同会議で演説する。「強固な日米同盟を世界に示す有意義な機会になる」と菅義偉官房長官は記者会見で語った。
注目されるのは演説の中身だ。「戦後70年間の日本の行動を大きく変える。後半国会、最大の課題」と野党第一党の岡田克也民主党代表が指摘する「安保法制の見直し」にどこまで触れることにするのか。
政府は5月の連休明けに安保法制見直し法案を国会に提出予定だが、国会での法案審議に先行して、安倍総理が政府・与党協議の合意のみを背景に、安保法制見直しや他国軍への後方支援、集団的自衛権行使にかかわる総理の考えを首脳会談や米国上下両院合同会議で発信することは国会、いいかえれば国民を軽視し、法案を硬直化させてしまう危険が生じる。
安保法制は、憲法はもちろん日本外交、国民の生命・財産に直接かかわる案件だ。国民の理解のもとにできるだけ与野党超えて合意が図れる法制であることが重要。法案審議で法案が修正できる余地がなければ、国会審議の意味がなくなる。
安倍総理が総理ポストに復活直後にオバマ米大統領と会談した際、自ら集団的自衛権の見直しを図る考えを示したことは、昨年7月の憲法解釈変更による「集団的自衛権の行使容認」の閣議決定を行うことを、この時点で公約したに等しい重い意味を持っていた。
同じことが、首脳会談での発言や米国上下両院合同会議での発言に言える。岡田民主党代表は集団的自衛権について「国民も理解していないのが現状」と話す。「日本政府は従来、集団的自衛権の行使を憲法違反と言ってきた。それを認めることは憲法解釈を大きく変えることになる。国民に分かるように議論したいし、後半国会の最大の課題」としている。そんな中で、演説に安保法制を入れるとすれば「慎重な発言」を求められるのは当然だろう。自衛隊の活動を担保する法案はまだ国会にもあがっていない。すべての具体的審議はこれからだ。
安倍総理は来月26日から5月3日まで渡米し、日米首脳会談を行うとともに上下両院合同会議で演説する予定だが、国会での具体的審議はこれからだということを念頭に、言葉を選んで、日本の立ち位置と方向性を発信してほしい。(編集担当:森高龍二)