歴史認識 誤解生まない「端的な表現」が賢明

2015年02月28日 09:58

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安倍内閣発足以来、歴史認識が国会の場でかなりの時間を割かれるようになった。なぜか。安倍総理は「全体として村山談話、小泉談話を引き継ぐ」とするが、侵略や植民地支配という事実を認めることに抵抗があるようだ

 自民党の政調会長が言った。「総理の談話なのだから、私は総理に任せるべきだと思う」。戦後70年に合わせ、安倍晋三総理が世界に向け発信する「総理談話」に稲田政調会長は政治資金パーティでこう語った。総理に対する信頼が余程厚いのだろう。

 しかし「総理談話」は日本の姿勢を世界に発信する「国民全体にかかわる重要な意味を持つ」。安倍総理は日本が侵略戦争を行ったこと、植民地支配を行ったことを歴史的事実として認めたうえで、深く反省し心からお詫びするとした村山談話を「全体として引き継ぐ」としてはいるが、反省を端的に表現する歴史的事実(侵略と植民地支配)の文言を入れると一言も発しない。

 村山談話と戦後60年の小泉談話は歴史的事実を明確に受け入れ、反省とおわびの上に立って、日本の歩むべき道を示した。これにより、韓国、中国など近隣諸国との関係改善の歩が進んだ。朝日新聞は米国務省のサキ報道官の話として「これまでに村山富市元首相と河野洋平元官房長官が示した謝罪が、近隣諸国との関係を改善するための重要な区切りだったというのが我々の見解」とする米国の見方を伝えた。事実を受け入れることから始まることを示す。

 ところが、安倍内閣発足以来、歴史認識が国会の場でかなりの時間を割かれるようになった。なぜか。安倍総理は「全体として村山談話、小泉談話を引き継ぐ」とするが、侵略や植民地支配という事実を認めることに抵抗があるようだ。

 戦後50年の国会決議に対し、安倍総理は「謝罪決議という大変にみっともない結果になった」とその後の著書に記した。この時の国会決議の際「与党から多くの欠席者が出た。安倍氏もその一人だった」(朝日新聞)という。これは安倍総理が謝罪の文言を入れることに受け入れられなかったと推察できる事案であり、いわば安倍総理の歴史認識が見えてきそうな出来事だ。安倍総理が歴史認識を修正するのではないかとの懸念の声が国内外からあがる所以でもある。

 これに党内からも「世界各国が注目する談話になる。できるだけ多くのみなさんの合意が得られるように努力すべき」(二階俊博総務会長)との声も。与党・公明党・山口那津男代表らも政府と与党の調整を談話については図るよう求めている。

 こうした中、有識者による初会合(21世紀構想委員会)が2月25日開かれた。西室泰三日本郵政社長を座長とする16人からなる委員会だ。社会民主党の又市征治幹事長は「総理の私的諮問機関だが、半数以上は総理のおトモダチ」とフェイスブックで発信している。

 安倍総理にすれば有識者による懇談会の意見を踏まえた総理談話だと、自ら主張したい中身に「客観性や正当性」を主張したいのではないか。委員会がどのような結論を提案するのか注視する必要があるが、これは総理の私的諮問機関。さらに、この結論に対し、菅義偉官房長官は「尊重する」としながら「(委員会の)意見を伺って、政府として(談話を)検討する」と、委員会の報告内容によっては、それが総理談話にどこまで反映されるのか・・・。安倍総理の結論ありきに委員会が利用されることのないよう、委員会の実効性を特に期待したい。

 あわせて、政府・与党協議での調整は最低限、必要だ。そして、歴史認識を修正したと誤解を生むことがないよう「端的な表現をすること」が、立ち位置を誤らずに未来に向かって進む日本の姿勢を発信するうえで、特に重要といわなければならない。総理談話は国民の思いを反映させ、発信するものでもある。(編集担当:森高龍二)